脳情報システム論   Systems and Computational Neurosciences

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担当教員
中村 清彦 
使用教室
木5-6(G324)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
94007
シラバス更新日
2009年7月30日
講義資料更新日
2009年7月30日
学期
前期

講義概要

脳神経系における知覚,記憶,学習,運動制御等についての生理学,解剖学,臨床医学等の知見を概説し,現在の脳神経科学が描く脳機構の全体像を把握してもらう。また,これらのデータを基に脳の情報処理機構を数理的に解析する研究を紹介し計算神経科学への入門とする。論じる事項は,神経細胞膜特性とHodgkin-Huxleyの等価回路,側頭葉と視覚認識,前頭連合野と計画・意志決定,運動領野と行動生成,海馬と記憶系,脳幹視床下部と報酬動因系,神経細胞群の同期興奮と情報統合,その他である。

講義の目的

脳神経系についての生理学,解剖学,臨床医学等の知見を概説し,現在の脳神経科学が描く脳の全体像を把握してもらう.また,これらのデータを基に脳の情報処理機構を数理的に解析する研究を紹介し計算神経科学への入門とする.

講義計画

1. 序論:脳の構造と機能局在
 脳の構造と各部位の機能を概説し講義計画を述べて講義選択の助けとする.
2. 神経細胞の膜特性と等価電気回路
 神経細胞は各種のイオンが細胞膜を通して内外へ移動することで電気信号を生じる.この機構を明らかにした諸実験とHodgkin-Huxleyの等価電気回路を解説する.
3. 感覚(視覚)系:側頭葉と頭頂葉
 大脳側頭葉の視覚神経路を例に感覚器(目)からの情報が単純な要素から複雑なものへ統合される過程を述べる.また、これらの知見の医工学応用としてbrain-machine interfacenについて紹介する。
4. 運動系:運動領野
 前頭運動野が複数の領野に分かれ適切な筋の組を適切な順序で動かすために働く機構を解説する.
5. 認知/計画系:前頭前野
 頭の最も前に位置する前頭前野は人で最も発達しており高次の思考を担うと考えられている。この領野についての諸知見と機能についての仮説を紹介する。また、情報の量に基づいて行動を選択する神経機構(Nakamura 2006)について説明する。
6. 脳神経細胞の周期興奮・同期興奮
 神経細胞対の興奮の時間相関が感覚刺激に依存して変化するデータが近年多数報告されている.その脳内情報処理との関連を議論する.
7. 報酬動因系:脳幹視床下部とシナプス可塑性
 満腹・空腹感は血中糖濃度の増減で生じる.これを検知する脳幹視床下部神経系とその神経信号を脳全体に伝えるドーパミン神経系について解説する.また、ドーパミン神経系の細胞活動を強化学習理論で説明した報酬予測誤差仮説について解説する。
8. 記憶系:海馬と大脳辺縁系
 海馬および大脳辺縁系が破損すると動物は経験を記憶できなくなる.これらの部位の記憶への関与について諸知見と仮説を紹介する.

教科書・参考書等

毎回の講義の中で参考文献を紹介する.

関連科目・履修の条件等

理系文系を問わずどの学部出身者にも理解できる内容を準備する.
学部生が聴講することも大いに歓迎する.大学院講義の受講申告のできない学部生(学部学習案内:第16項参照)が聴講を希望する場合は下記連絡先の中村へ問い合わせること.
学外者で本講義に興味のある者は下記連絡先の中村へ問い合わせること.

成績評価

期末試験と授業中の演習の両方から総合的に評価する.

担当教員の一言

脳科学は現在急速に発展しつつある分野で体系化された理論はまだない.したがって代表的な個別の実験データおよび仮説を紹介し,この分野の現況を理解してもらう.

その他

【連絡先】
G3棟-1117 TEL 045-924-5209 nakamura@dis.titech.ac.jp

講義スケジュール及び場所
前期(2007年4月12日~7月19日)毎週木曜日13:20~14:50
東工大長津田すずかけ台キャンパス(東急田園都市線すずかけ台駅徒歩5分)講義室:G3棟G324室

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