制度設計理論特別講義   Advanced Economic Theory

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担当教員
渡辺 隆裕 
使用教室
集中講義等 (W9-626)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
68066
シラバス更新日
2014年10月3日
講義資料更新日
2014年11月29日
アクセス指標
学期
後期

講義概要

メカニズムデザイン,ゲーム理論,数理経済学で用いられる重要な定理(Farkasの補題,Spernerの補題,BrouwerとKakutaniの不動点定理,Tarskiの不動点定理)について講義する.この講義では,これらの定理を詳しく知るとともに,定理からその応用(ゼロ和・非ゼロ和ゲームの均衡点,無裁定条件とリスク中立確率,協力ゲームのコア,非羨望配分,線形計画法の双対定理)にふれる.経済学の講義では解析的な側面から定理が証明されることが多いが,本講義では,代数的な(構成的な)証明も紹介して,均衡点の計算やアルゴリズムの理解につなげたいと考えている.

講義の目的

(1)本講義で取り上げられる定理は,メカニズムデザイン,ゲーム理論,数理経済学のどの分野においても重要な定理である.しかし他講義では定理の応用を講義することが主眼のため,定理自身が詳しく講義されないことが多い.その一方で,線形代数,微分積分,経済数学でもこれらの定理は詳しく講義されない.これらの定理について詳しく知ることは,上記分野の研究を進める力になると考えられる.
(2)講義と演習を通じて,数学的な思考を身につける.定理の証明などを通じて論理的思考力を強化することは,ゲーム理論や数理経済学の理論分野以外の大学院生についても良い機会になると考えている.
(3)経済学や社会科学における計算機の活用が重視されつつあるが,従来の上記分野のテキストにおける均衡点の数学的性質の証明や解説は解析的な側面が強く,代数的・計算機的な側面が薄い.一方で線形計画法のテキスト等は,求解法について中心に講義されるため,経済学等で重視される存在定理や比較静学にこれらの数理を結びつけようとする意識が薄い.本講義は,これらを埋めようとする試みである.

講義計画

10/3 第1回 ガイダンス
10/17 第2回 数学的準備,Farkas補題の証明(1)
第3回 Farkas補題の応用(1)
10/31 第4回 演習1(第3回の宿題)
第5回 Farkas補題の応用(1)つづき
11/14 第6回 Farkas補題の帰納的証明(2),
第7回 Farkas補題の帰納的証明(2),Farkas補題の応用(2)
11/28 第8回 演習2(第7回の宿題)
第9回 Farkas補題の応用(2)つづき
12/5 第10回 演習4(第9回の宿題)
第11回 Farkas補題の証明(2)
12/12 第12回 Sperner補題とその証明
第13回 Brouwer不動点定理と角谷の不動点定理
1/23 第14回 Tarski不動点定理
第15回 優モジュラゲーム

教科書・参考書等

講義ノートを配布して行う予定だが,講義ノートは以下のテキストを参考にしている部分が多い.
1)Rakesh V. Vohra,Advanced Mathematical Economics (Routledge Advanced Texts in Economics and Finance), 2004, Routledge.
2)Zaifu Yang, Computing Equilibria and Fixed Points (Theory and Decision Library C), 1999, Springer.
3)Kim C. Border, Fixed Point Theorems with Applications to Economics and Game Theory, 1985, Cambridge University Press.
4)Donald M. Topkis, Supermodularity and Complementarity (Frontiers of Economic Research), 1998, Princeton Univ Pr.

関連科目・履修の条件等

履修にあたっては,ミクロ経済学,ゲーム理論,線形代数,微積分,最適化数学について基本的な知識を身につけていることが必要です.
Recent Development in Game Theory,最適化特論,経済学特講Iに関連します.

成績評価

本講義は隔週で行われますが,そのうち4回ほど宿題のレポートが出ます.参加者はそのレポートを提出するとともに,次回の講義において(当番制で)それを解答します.レポートの提出状況と演習解答の参加状況により,成績を評価します.レポートの負荷はそれほど高くないと考えています.

担当教員の一言

私にとっても挑戦的な講義なので,受講者の皆さんの協力で共に作り上げていく講義にしたいと考えています.数学中心の講義ですが,経済やゲーム理論での応用も取り入れますので,多くの人に興味を持って頂ければと思います.内容を多くせず演習も取り入れて,じっくりと講義内で理解できるように進めていきたいと考えています.

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