計画組織デザイン特論   Organizational Design for Planning

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担当教員
坂野 達郎  川村 治夫 
使用教室
水3-4(W9-402,403)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
68008
シラバス更新日
2012年10月9日
講義資料更新日
2012年10月2日
アクセス指標
学期
後期

講義概要

価値多元性とリスク化する社会にあって、近代合理性にもとづく社会デザインの効率性と正当性に疑問が投げかけられるようになりました。それに伴い、近代合理性を最も体現してきた意思決定の形式である計画とその延長線上にある組織編成原理=官僚制に対する見直しが行われてきました。計画理論という学問分野が生まれたのは、近代合理性に基づく合理的計画に対する批判からです。同様に、現代の組織理論は、官僚制に変わる組織原理を模索することから始まっています。計画と組織論に共通するのは、複数主体の行為の協調という問題です。特に、公的セクターにおいて問題になるのは、集合行為ジレンマ状況における協力問題です。集合行為ジレンマを解決するためには、何らかの行為制限が必要になります。ここでも、権力行為に正当性をもたせる代表民主制という政治制度と、官僚制的原則にもとづく行政制度の見直しが活発に議論され、社会実験が行われています。だたし、代替的メカニズムを理解しデザインするためには、これまでの原理が何であったのか明確に再認識することが不可欠です。古い原理の正しい理解の上に、代替原理を提案する知識とセンスを身につけることがこの講義の目的です。

講義の目的

講義の前半は、計画理論について学びます。特に、近代合理主義にもとづいた計画観に対する代表的批判である、アドボキャシーとインクレメンタリズムについて学びます。続いて、公的セクターにおける計画が、政治思想とどのような関連を持っているか理解を深め、計画理論が権力の問題をどのように扱ってきたか理解を深めます。つづいて、権力問題を集合行為ジレンマ問題と関連づけることで、代替案の可能性を、E.Ostromの自己組織的集合行為、及び討議合理性をヒントに模索します。続いて、後半では、公的セクターにおける組織理論を学びます。まず、官僚制とテイラリズムについて学びます。これらが、近代以降の社会の編成原理としていかに根深く浸透しているかを理解することが、真の代替的組織編成原理を構想する力の基礎になります。続いて、反テイラリズムの組織論について学びます。鍵になるのは、内発的動機付けをいかに取り込んだかという点です。以上の経営組織論の変遷をもとに、ニューパブリック・マネジメントという20世紀後半から広まった行政改革について理解を深めます。ただし、ニューパブリック・マネジメントという行政改革は、脱官僚制という組織内改革の側面と同時に、準市場や社会起業の活用といった行政組織の枠を越えた改革の側面を持っています。そこで、講義の最後では、後者の側面について議論を深めます。そもそも、国家と市場とは異なる非営利組織がなぜ存在するのか、公的ザービスの供給においてなぜ効率的なのか、という2大問題を制度とインセンティブの観点からどのような理論が提唱されている紹介します。

講義計画

第1週から第7週は、計画理論について、第8週からは公共セクターの組織理論について論じる。

Week 1: イントロダクション: 計画理論と組織理論

●計画理論
Week 2: アドボキャシー・プランニング vs 道具的合理性

Week 3: インクレメンタリズム vs シノプティック・アプローチ

Week 4: 政治思想と計画のスタイル

Week 5: 公共性の再定義:集合行為問題と計画

Week 6: 公共性の再定義:LCPとゲシュタルト性

Week 7: 集合的意思形成の再設計:討議デモクラシー

●公的セクターの組織理論

Week 8: 官僚制とテイラーリズム

Week9: ソシオ・テクニカルアプローチと反テイラーリズム

Week10: 内発的動機づけ理論にもとづく組織デザイン

Week11: ニューパブリック・マネジメントとMBO

Week12: 非営利組織の経済理論:中位投票、契約の失敗

Week13: ハイブリッドな制度の設計理論

Week14: 予備

教科書・参考書等

テキストは、各回ごとにテーマに合わせて配布もしくは指定します。

関連科目・履修の条件等

特になし。ただし、学部の公共システム分析を履修していることが望ましい。

成績評価

レポート、授業での発言を重視します。

担当教員の一言

教員と学生の創発的なインタラクションを大切にしたいと考えています。

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