価値システム専攻は,「価値判断と意思決定の科学」をめざす世界でもきわめてユニークな大学院専攻である。本講義では,この新しい科学の理念,研究方法,予想される研究成果などについて論じる。形式は,価値システム専攻教員がリレー式講義で行う.「価値システム学」の入門となる講義である.
価値判断と意思決定に関して,価値システム学構築の展望を論じるのが目的である.価値システム学は,理論と実践の融合と,文理融合という大きな特徴を持つ.そこで,本講義では全体を2群に分け,それぞれの特徴について深く掘り下げた議論をおこなう.特に本年度は「幸福・平等」という共通テーマについて議論を行う.前半は理論と実践の融合に焦点をあて,後半は文理の融合に焦点をあて,議論をおこなう.受講者は,専攻教員が価値システム学という新しい領域をどのように設計し,つくりあげているのか,複眼的な観点から学習することができるであろう.そして受講者自身が築きあげるのはどのような価値システム学であるのか,意義深い洞察を得ることになるだろう.
講義日程
理論と実践の融合グループ
4月11日 桑子 社会的合意形成とプロジェクト・マネジメント
4月18日 上田 「日本的世間」と幸福
4月25日 伊藤 観客参加型アートについて
5月 2日 金子 実定法と幸福・平等の概念
5月16日 蟹江 持続可能な開発と幸福・平等
5月23日 モートン 近代日本歴史における災害の解釈学
5月30日 谷口 社会調査にみる現代日本人の幸福感・平等感
6月 6日 前半 総合討議,大学院TA進行
文理融合の方法論グループ
6月13日 江川 現場に学ぶ
6月20日 猪原 合意形成の手法 - 幸福・平等・効率
6月27日 木嶋 意思決定のプロセスと構造
7月 4日 今田 文理融合のアプローチ
7月11日 劉 比較文学比較文化の原理とその方法Ⅰ
7月18日 戦 比較文学比較文化の原理とその方法ⅠⅠ
7月25日 後半 総合討論,大学院TA進行
7月29日(月)レポート提出期限
参考文献(この参考文献情報は過去掲載のものです2013年は更新していません)
蟹江
・西岡秀三編著「日本低炭素社会のシナリオ:二酸化炭素70%削減の道筋」日刊工業新聞社、2008年
・茅陽一編著「低炭素エコノミー:温暖化対策目標と国民負担」日本経済新聞出版社、2008年
徃住
・徃住彰文 (2001) 認知的感情の構造と文学テクスト理解.認知科学, 8, [4], pp.369-375.
猪原
・THE GIFT OF THE MAGI, O. Henry, http://www.auburn.edu/~vestmon/Gift_of_the_Magi.html
・賢者の贈り物(The Gift of the Magi),オー・ヘンリー(O. Henry)作 ,結城浩訳)http://www.hyuki.com/trans/magi.html
・猪原健弘, 「賢者の贈り物」の分析~標準形ゲーム理論と社会ネットワーク理論の融合~, 東工大クロニクル, No.403, http://www.titech.ac.jp/publications/j/chronicle/403/403-7.html
・Relational dominant strategy equilibrium as a generalization of dominant strategy equilibrium in terms of a social psychological aspect of decision making, European Journal of Operational Research, Volume 182, Issue 2, 16 October 2007, Pages 856-866.
価値システム専攻生および価値システム専攻を副専門とする者だけが履修できる.
出席点とレポートで行う.
1) 成績は出席状況とレポートによって評価する.重みづけはそれぞれ0.5である.
2) レポート課題:自分の関心がある研究テーマを前半と後半それぞれのグループから一つずつ選び,前半と後半それぞれの総合討論での議論を考慮に入れた上で,合計2本の独立したレポートを作成せよ.選んだテーマに対する価値システム学的アプローチを述べ,有効性と限界について議論せよ.各2,000字以上.A4サイズ(1枚1,000字程度)で提出.図表は1枚200字で換算.
3) レポートを提出する教員の指定:2本それぞれのレポートについて,グループの中で自分の選んだ研究テーマに関連している教員2名を選び,表紙に明記し,提出すること.レポートの評価は,①講義内容の理解,②講義相互間の関連性について考察,③考察の深さ・独自性,により行う.
(提出されたレポートの評価とは別に,教員からレポートに関するコメントが返される場合がある)
4) 提出先:西9号館2Fにある本講義レポート提出用のメール・ボックス
5) 提出期限:2013年7月29日(月)17:00