地方分権時代の地方財政のあり方について,地方財政の格差問題を中心に検討していく。講義の前半は,地方財政の基本的仕組みと課題について解説し,後半は地方財政の格差是正の仕組みである地方財政調整制度(地方交付税制度)をめぐる最新の議論の紹介や実証分析を行う予定である。各自の研究には直接関わらない分野と思われるが,地方財政を制度的にとらえるアプローチは研究手法の幅を広げる上で参考になると思う。
地方財政論は財政学の一分野という位置づけにもかかわらず、1990年代以降の地方分権の潮流の中でその研究分野としての重要性はますます高まっている。地方財政研究の特徴は単なる数量的なアプローチだけでなく、地方自治の法制度や地域の暮らしにかかわる諸課題などと密接に結びついた総合的な研究領域にある。各自の研究課題にかかわらず、地方財政の講座を通じて何らかの問題意識をもっていただければ幸いである。
なお、前半は講義中心であるが、後半には地方財政の格差問題に関する財政分析の共同作業を行う予定である。
1 地方分権と地方財政
2 地方財政の構造
3 地方税の構造と課税権
4 地方財政の国際比較
5 財政格差と財源保障
6 地方自治体の破綻問題
7 分権型地方財政への道-三位一体改革
8 分権型地方財政への道-第2期分権改革
9 財政分析I-地域間社会経済格差の検証
10 財政分析II-地域間財政格差の検証
11 財政分析III-1-地方交付税制度と資料の解説
12 財政分析III-2-財政調整機能の検証
13 予備日程
基本テキスト 和田八束、星野泉、青木宗明編『現代の地方財政第3版』有斐閣
参考テキスト 伊東弘文『入門地方財政』ぎょうせい
林宏昭、橋本恭之『入門地方財政』中央経済社
神野直彦、金子勝『地方に税源を』東洋経済新報社
神野直彦、金子勝『福祉政府への提言』岩波書店
関心があれば分野問わず
受講者数によるが、基本的にはレポートを予定