高度科学技術社会に生じる諸問題の根底には,多様な価値観の対立の問題がある。その対立のうち,主要なものを年度ごとに選び,それらの構造と論理を明らかにするとともに,対立の克服,来たるべき社会像について論ずる。
「癒し」と「生きる意味」
広がる格差、豊かだが満たされない、自分が自分の人生を生きている気がしない・・・、この現代社会の未来にはいかなる可能性があるのだろうか。そういった現代文明批判の視点から「癒し」という言葉を提出し、文化人類学の研究者でありつつ常に時代への提案を行ってきた立場から、現代人の「生きる意味」のありかと、真の豊かさを保証する社会の構想を、参加者とともに考えていきたい。
私自身の出発点であったスリランカの「癒し」の儀礼、現代日本の「生きる意味の不況」の問題点、そして最近推進している日本仏教の再活性化運動、昨年行ったダライ・ラマ14世との対談などを取り上げながら、現代に生きるものの苦悩と解放を論じたい。一方通行の講義ではなく、参加する人たちの問題意識とのぶつかり合いの場としたいので、参考書等はあらかじめ読んできてもらい、講義中はディスカッションの時間を多く持つことができればと考えている。
上田紀行『生きる意味』(岩波新書)、上田紀行『目覚めよ仏教!―ダライ・ラマとの対話』(NHKブックス)ほか。
出席、発表とディスカッションへの貢献度、レポートによる。
多様な人々による活発なディスカッションやワークによって進めていきたいので、前向きな参加を希望したい。