価値システム専攻は,「価値判断と意思決定の科学」をめざす世界でもきわめてユニークな大学院専攻である。本講義では,この新しい科学の理念,研究方法,予想される研究成果などについて論じる。形式は,価値システム専攻教員がリレー式講義で行う.「価値システム学」の入門となる講義である.
価値判断と意思決定に関して,価値システム学構築の展望を論じるのが目的である.価値システム学は,理論と実践の融合と,文理融合という大きな特徴を持つ.そこで,本講義では全体を2群に分け,それぞれの特徴について深く掘り下げた議論をおこなう.前半は理論と実践の融合に焦点をあて,特に本年度は「震災」という共通テーマについて議論をおこなう.後半は文理の融合に焦点をあて,特にその方法論を意識した議論をおこなう.受講者は,専攻教員が価値システム学という新しい領域をどのように設計し,つくりあげているのか,複眼的な観点から学習することができるであろう.そして受講者自身が築きあげるのはどのような価値システム学であるのか,意義深い洞察を得ることになるだろう.
理論と実践の融合グループ
4月12日 桑子 (震災対応と社会的合意形成の方法)
4月19日 上田 (震災・原発事故の文化的考察)
4月26日 金子 (法の限界)
5月10日 蟹江 (学際的共同研究の方法:震災ガバナンス研究を例に)
5月17日 モートン(震災と文学)
5月24日 谷口 (大学の地震防災)
5月31日 前半全員(総合討議:理論と実践の融合)
文理融合の方法論グループ
6月 7日 江川 (現場に学ぶ)
6月14日 徃住 (美と価値の科学)
6月21日 木嶋 (社会システムモデリングの方法)
6月28日 猪原 (合意形成の手法)
7月 5日 中丸 (社会シミュレーションと人間行動進化)
7月12日 今田 (文理融合の方法論について)
7月19日 劉 + 戦(比較文化の原理とその方法)
7月26日 後半全員(総合討議:文理融合の方法論)
7月27日(金)レポート提出期限
参考文献
金子
・井上薫『裁判官の横着』中公新書
蟹江
・西岡秀三編著「日本低炭素社会のシナリオ:二酸化炭素70%削減の道筋」日刊工業新聞社、2008年
・茅陽一編著「低炭素エコノミー:温暖化対策目標と国民負担」日本経済新聞出版社、2008年
徃住
・徃住彰文 (2001) 認知的感情の構造と文学テクスト理解.認知科学, 8, [4], pp.369-375.
猪原
・THE GIFT OF THE MAGI, O. Henry, http://www.auburn.edu/~vestmon/Gift_of_the_Magi.html
・賢者の贈り物(The Gift of the Magi),オー・ヘンリー(O. Henry)作 ,結城浩訳)http://www.hyuki.com/trans/magi.html
・猪原健弘, 「賢者の贈り物」の分析~標準形ゲーム理論と社会ネットワーク理論の融合~, 東工大クロニクル, No.403, http://www.titech.ac.jp/publications/j/chronicle/403/403-7.html
・Relational dominant strategy equilibrium as a generalization of dominant strategy equilibrium in terms of a social psychological aspect of decision making, European Journal of Operational Research, Volume 182, Issue 2, 16 October 2007, Pages 856-866.
価値システム専攻生および価値システム専攻を副専門とする者だけが履修できる.
出席点とレポートで行う.
1) 成績は出席状況とレポートによって評価する.重みづけはそれぞれ0.5である.
2) レポート課題:自分の関心がある研究テーマを前半と後半それぞれのグループから一つずつ選び,合計2本の独立したレポートを作成せよ.選んだテーマに対する価値システム学的アプローチを述べ,有効性と限界について議論せよ.特に従来の研究アプローチと比較して,価値システム学的アプローチの優れている点と問題点について明確に言及すること.各2,000字以上.A4サイズ(1枚1,000字程度)で提出.図表は1枚200字で換算.
3) レポートを提出する教員の指定:2本それぞれのレポートについて,自分の選んだ研究テーマに最も関連している教員を選び,表紙に明記し,提出すること.
4) 提出先:西9号館2Fにある本講義レポート提出用のメール・ボックス
5) 提出期限:2012年7月27日(金)17:00