価値システム専攻は,「価値判断と意思決定の科学」をめざす世界でもきわめてユニークな大学院専攻である。本講義では,この新しい科学の理念,研究方法,予想される研究成果などについて論じる。形式は,価値システム専攻に所属する教員がリレー式講義で行う。「価値システム学」の入門となる講義である。
価値判断と意思決定に関して,価値システム学構築の展望を論じる.この授業では,価値システムの教員と,価値システム専攻で博士の学位を取得し各界で活躍する価値システム専攻出身者が協同的に講義を計画し,担当している.したがって受講者は,(a) 教員はこの新しい領域をどのように設計し,つくりあげているのか,(b) 出身者はどのようなサクセス・ストーリーを生きつつあるのか,という複眼的な観点からの学習が可能となる.そして,(c) 自分が築きあげるのはどのような価値システム学であるのかについて,意義深い洞察を得ることになるだろう.
価値の根源グループ
4月 8日 桑子 (社会的合意形成の諸問題)
4月15日 高岸 (文化財とミュージアムの諸問題)
4月22日 モートン (外国文化から見た日本の価値観)
5月 6日 金子(裁判官の価値判断と意思決定-自由心証の原則-)
5月13日 桑子+髙岸+モートン+金子(ミニ・シンポジウム)
価値と意思決定のサイエンス・テクノロジーグループ
5月20日 木嶋 (エージェントベースモデリングの基礎)
5月27日 猪原 (合意形成の手法)
6月 3日 徃住 (価値のための情報テクノロジー)
6月10日 木嶋+猪原+徃住 (ミニ・シンポジウム)
価値と社会グループ
6月17日 井口 (現代の犯罪と文学)
6月24日 江川 (「働き方」と「暮らし方」のあるべき姿を問う)
7月 1日 中丸 (生物進化論で社会を読み解く)
7月 8日 今田 (グローバリゼーションと日本の役割)
シンポジウム(授業と同じ時間,場所)
7月15日 現代社会を生きるために --価値判断と意思決定-- 桑子(司会)+全員
7月29日 (予備日)
8月 5日 (予備日)
参考文献
蟹江
・西岡秀三編著「日本低炭素社会のシナリオ:二酸化炭素70%削減の道筋」日刊工業新聞社、2008年
・茅陽一編著「低炭素エコノミー:温暖化対策目標と国民負担」日本経済新聞出版社、2008年
髙岸
・蓑豊『超・美術館革命―金沢21世紀美術館の挑戦』(角川書店、角川oneテーマ21、2007年)
金子
・井上薫『裁判官の横着』中公新書
猪原
・THE GIFT OF THE MAGI, O. Henry, http://www.auburn.edu/~vestmon/Gift_of_the_Magi.html
・賢者の贈り物(The Gift of the Magi),オー・ヘンリー(O. Henry)作 ,結城浩訳)http://www.hyuki.com/trans/magi.html
・猪原健弘, 「賢者の贈り物」の分析~標準形ゲーム理論と社会ネットワーク理論の融合~, 東工大クロニクル, No.403, http://www.titech.ac.jp/publications/j/chronicle/403/403-7.html
・Relational dominant strategy equilibrium as a generalization of dominant strategy equilibrium in terms of a social psychological aspect of decision making, European Journal of Operational Research, Volume 182, Issue 2, 16 October 2007, Pages 856-866.
徃住
・徃住彰文 (2001) 認知的感情の構造と文学テクスト理解.認知科学, 8, [4], pp.369-375.
井口
・永山則夫『無知の涙』(河出文庫)
江川
・パク・ジョアン・スクッチャ、「会社人間が会社をつぶす:ワーク・ライフ・バランスの提案」、朝日新聞社、2002
・荒金雅子 他、「ワークライフバランス入門:日本を元気にする処方箋」、ミネルヴァ書房、2007
価値システム専攻生および価値システム専攻を副専門とする者だけが履修できる.
1) 成績は出席状況とレポートによって評価する.
2) レポート課題:自分の関心がある研究テーマを一つ選び,そのテーマに対する文理融合アプローチを述べ,有効性と限界について議論せよ.選んだテーマに対する従来の研究アプローチと比較して,文理融合アプローチの優れている点と問題点について明確に言及すること.4,000字以上.A4サイズ(1枚1,000字程度)で提出.図表は1枚200字で換算.
3) レポートを提出する講師の指定:講義を行った教員の中から,自分の選んだ研究テーマに最も関連している講師を一人選び,表紙に明記の上,提出する.
4) 提出先:西9号館2Fにある本講義レポート提出用のメール・ボックス
5) 提出期限:2010年7月29日(木)