社会的価値意識は膨大な言説複合体として形成されている。我々の日々の言説実践は,こうした社会的言説への批判を内蔵していなければならない。講義では近代の文芸批評を事例として,文芸批評とはいかなる言説行為であるか,文芸批評はいかに社会的言説と切り結んだか,を考える。扱うのは,小林秀雄と中野重治の対比を中心に,昭和の戦時下の言説。
今年度は「戦後文学再検討」として講義する。
戦後文学は、戦争・敗戦体験を核として出発した。戦争・敗戦体験はいかに認識され、いかに表現されたか。敗戦・被占領期を中心に、戦後文学が最も熱気を帯びていたほぼ十年間の戦後文学の意義を再検討する。
主なトピックは以下の通り。
・死者の遺言執行 ・焼跡の可能性 ・廃墟の実存 ・弱兵たちの戦場 ・革命とヒューマニズム ・アジアという原罪 ・戦後的悪文の系譜 ・批評家たちの戦前戦後 ・リアリズムからの離脱 ・「全体小説」とは
授業の方法
(Teaching Methods) 講義中心の予定だが、適宜学生諸君の発表も織り込みたい。
取り上げる作家は坂口安吾、太宰治、野間宏、椎名麟三、武田泰淳、埴谷雄高、大岡昇平、三島由紀夫等。対象はほぼ十年間だが、現代の文学状況まで見通すパースペクティヴは保持しながら進める。広義には日本はなおも「戦後」なのだから。
講義中心の予定だが、適宜学生諸君の発表も織り込みたい。受講者数等によって判断する。
授業で使用する資料はコピーで配布する。
参考書
井口時男『悪文の初志』(講談社)
特になし。
出席(と発表)およびレポート
特になし。