今日の大学社会が直面する「国際化」,「総合化」,「情報化」に視点を捉え,歴史学の研究手法を再構築することを本講義の課題とする。歴史史学と情報科学の関係を捉え,情報史の視点で近代社会を見直す。担当教員が専門とするスラヴ東欧の国際関係史から,印刷革命,書籍文化の確立,知識情報の伝達,情報統制,検閲制度,権力の一元化と集中,書物の大量消費等をテーマに選び,近代国家の形成過程を検討する。
本授業科目のねらいは、「国際化」、「情報化」、「総合化」の三点をキーワードとしてボーダーレス化した現代社会を読み解くことである。講義の前半部は、歴史史料学と情報科学の関係をめぐって理論的考察を試みる。後半部では、担当教官が近年現地調査を実施しているリトアニア、ウクライナ、ポーランドの歴史的背景を分析し、複数の民族集団が共生する地域社会の構造を明らかにする。とりわけルネッサンス期の活版印刷技術の伝播が、東欧スラヴ世界における国民形成にどのように貢献したかを検討することにする。
1. 国際化と地域研究(1)
2. 国際化と地域研究(2)
3. 情報化と地域研究(1)
4. 情報化と地域研究(2)
5. 歴史史料学(1)
6. 歴史史料学(2)
7. 書誌情報と書誌環境の再構築(1)
8. 書誌情報と書誌環境の再構築(2)
9. 複数民族集団の共生、近代ロシアの社会構造(1)
10. 複数民族集団の共生、ポーランド社会(2)
11. 複数民族集団の共生、リトアニア社会(3)
12. 複数民族集団の共生、ウクライナ、ベラルシ社会(4)
13. 複数民族集団の共生、移民、難民、亡命者社会(5)
14. 討論(1)
15. 討論(2)
1. ウラディーミル・ディヤコフ、『スラヴ世界、革命前のロシア社会思想史から』(彩流社、1996年)
2. 早坂真理、『ウクライナ、歴史の復元を模索する』(リブロポート、1995年)
とくになし
授業の出席状況とレポートによって行う。
激動の激しいスラヴ東欧、ユーラシア地域に関心をもってもらいたい。