生態環境システム保全・再生論   Conservation and Restoration of Ecological Environmental Systems

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担当教員
灘岡 和夫  中村 隆志 
使用教室
木5-6(W831)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
77013
シラバス更新日
2015年3月24日
講義資料更新日
2015年3月16日
学期
前期

講義概要

本講義では,下記の「講義の目的」に示す基本的な立場にたって,沿岸域の生態系保全問題を主たる対象として,沿岸域に隣接する陸域,外洋域,大気からの影響・相互作用をも考慮した統合生態環境システムとしての理解と評価や,社会-生態統合系としてのresilientでsustainableなシステムのあり方を追求していく上での議論を,様々な事例を挙げて展開する.また,対象とする生態系の定量的な実態把握のためのモニタリング・解析手法や環境システム評価・予測のための数値シミュレーションについても実例の紹介を通して講述する.最後に,いくつかのグループに受講生が別れ,各グループで,沿岸生態系保全に関わる具体的なテーマを設定し,それについての上記の観点からの議論を行い,その成果をグループ発表会で発表するとともに,レポートとして提出する.

講義の目的

【テーマ】 地球上に存在するさまざまな生態系には,温暖化に代表される地球規模のストレス要因に,さまざまな人為的な要因によるローカルなストレス要因が重なる形で複合的に作用しており,その生態系の劣化の進行が顕著になりつつある.したがって,劣化のさらなる進行を食い止め,ひいては再生させていくための戦略論が必要になる.そのためには,対象とする生態系が維持されている基本的メカニズムを理解した上で,生態系への複合的な環境負荷の実態とそれによる生態系の応答過程のダイナミクスを定量的に明らかにする必要がある.そして,環境負荷の生成要因であると同時に制御主体としての側面も有する人間・社会システムの有り様と,生態系との相互作用過程を明らかにし,それに基づいて,resilientでsustainableな社会-生態統合系(Socio-Ecological System;SES)としてのあり方を模索する必要がある.
【到達目標】 本講義では,沿岸生態系を主たる対象として,上記の様々な観点から生態系保全論のあり方を論じる.その際,一般的に生態環境が本質的にきわめてシステム的であり,しかもオープンシステムとしての様相を強く持つことから,個別対象・アプローチのみによる生態系保全論には限界があり,必然的に,多角的・広域的・統合的な取組みが不可欠となることを,様々な事例を通じて示す.受講学生は,一連の講義や具体的なテーマを選定した上でのグループ討議を通じて,そのような観点からの問題構造の把握や解決策の提案の能力を養うことを目標とする.

講義計画

①イントロダクション
   生態環境システムの特徴/危機にある沿岸生態系 (4/9)
②沿岸生態系の基礎理論その1―沿岸海洋生態系の基礎生産・物質循環 (4/16)
③沿岸生態系の基礎理論その2-陸上生態系との違い,生物多様性 (4/23)
④閉鎖性内湾域の生態環境問題 (5/7)
⑤干潟・藻場・マングローブ生態系の特徴と環境問題その1 (5/14)
⑥干潟・藻場・マングローブ生態系の特徴と環境問題その2 (5/21)
⑦サンゴ礁生態系の特徴と環境問題その1(by中村隆志) (5/28)
⑧サンゴ礁生態系の特徴と環境問題その2(by中村隆志) (6/4)
⑨アジア・オセアニアの沿岸生態系に関わる環境問題 (6/11)
⑩沿岸生態環境システム保全・再生計画の事例 (6/18)
⑪沿岸生態環境システム保全・再生に向けての基本フレームpart1 (6/25)
保全・再生の基本理念/保全・再生に向けての2つの機軸/複合ストレスの包括的把握と評価/生態系ネットワークとシステム回復力/海洋保護区/環境収容力
⑫沿岸生態環境システム保全・再生に向けての基本フレームpart2 (7/2)
再生技術の可能性と限界/順応的管理とは/「里海」は実現し得るか/環境モニタリングの重要性/普及・啓発・環境教育・人材育成
⑬社会-生態統合系(Socio-Ecological System;SES)フレームから見た保全戦略 (7/9)
⑭グループディスカッション1 (7/16)
⑮グループディスカッション2 (7/23)
⑯グループ発表会 (7/30)

教科書・参考書等

教科書: なし
参考書: なし

関連科目・履修の条件等

特になし

成績評価

この講義では期末試験は実施しませんが、グループディスカッションの成果をグループごとにレポートにまとめて提出するとともに、期末試験期間中の7月30日にグループ発表会を実施し、各グループの発表内容について受講学生全員で議論する場を設けます。

講義出席(約2割)・グループ発表会(約4割)・レポート(グループ毎,約4割)

連絡先(メール、電話番号)

nadaoka@mei.titech.ac.jp

オフィスアワー

毎週木曜日15:00-15:30

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