無機固体化学特論   Advanced Inorganic Solid State Chemistry

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担当教員
大友 明 
使用教室
月3-4(S423)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
34006
シラバス更新日
2015年4月1日
講義資料更新日
2015年3月16日
学期
前期

講義概要

現代化学の多くの分野は,有用な化合物の物理的性質を明らかにし,その物理的性質から新しい化合物の組成や構造を設計する双方向のサイクルで発展してきた.一方,ある原理ですでに体系化された化合物群の中から新しい物性や機能が見つかることも珍しくない.知識として体系化されたものが何故そうなったのか,歴史的な背景や社会的要請に基づいて改めて見直すと,既成概念の展開方法や応用例の深い理解につながる.例えば,電池と磁石は,それぞれ電力貯蔵や電気モーターに欠かせない基幹要素であり,環境エネルギー問題を解決する有効な手段を提供する.ともに私たちの身近にある存在であるが,原理は見かけの働きほどは単純ではない.また,これらの用途に使われる元素は希少なものを多く含み,元素代替の必要性が年々増している.このような社会的背景も踏まえると,電池と磁石は固体物質の反応性や物性における元素の役割を深く考察する上で好適な題材と捉えることができる.

講義の目的

本講義を履修することによって,固体の電気的性質を化学結合の性質と結晶学的な周期ポテンシャルの考え方に基づいて理解できるようになることを到達目標とする.ここで扱う電気的性質には,金属,半導体,絶縁体,超伝導体,量子構造における電気伝導と電子構造が含まれる.それらがどのような原理に基づいて決まるのか,分子軌道理論,自由電子理論,バンド理論を組み合わせて説明できるようになることを目標とする.また,電池と磁石に関する諸原理やそれらに用いる化合物の合成方法ならびに反応性を理解できることを達成目標とする.

講義計画

本講義では,歴史上固体化学と固体物理が相補的に発展してきたことを踏まえ,応用化学と固体物性の知識を結びつけて理解できるように各回のテーマを設定する.具体的にはまず応用化学の諸原理を論じ,関連する物性理論を講述する.次に電池の基本原理であるレドックス反応と電気化学セルの役割について論じる.また,種々の電池反応を通じて電気化学セル反応の特徴を学ぶ.さらに電池反応における無機化合物の複雑な様態を理解するために状態図の使い方や相変態の考え方について講述する.最後に磁性の基本原理である局在スピンの働きについて述べ,有用な磁性体の特徴について理解を深める.

教科書・参考書等

固体化学入門(A. R. West著)邦訳版、講談社サイエンティフィク
Understanding Solids The Science of Materials (R. Tilley著)Wiley

関連科目・履修の条件等

無機化学と物理化学の基礎を学んでいること。

成績評価

期末試験の成績により評価する。

担当教員の一言

無機固体の合成・評価実験を行っている大学院生に履修を勧める。

連絡先(メール、電話番号)

e-mail:aohtomo@apc.titech.ac.jp
南1号館605号室(内線2145)

オフィスアワー

メールによる事前連絡をすること。

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