講義では,ステレオ投影など結晶学の基礎から始め、結晶の対称性を表す点群および空間群について対称要素の組み合わせから導く過程を説明する。3次元結晶が取り得る空間格子を示し、逆格子の概念を導入する。これらの知識を現実の金属や半導体などの現実の結晶構造を通して理解する。結晶の示すマクロな物理的性質はテンソル量であることを示し、テンソルの形が点群対称性から制限されることを学ぶ。結晶構造を研究するのに必要なX線や電子線の回折理論について運動学的近似の下で取り扱う。回折理論で現れるフーリエ変換の数学的な性質を述べ、結晶構造解析法に用いられるパターソン関数を使い、簡単な周期構造や乱れた構造からの散乱を取り扱う方法について説明する。
結晶物理学では、物質の基本的構造が原子の周期的配列すなわち結晶であることを理解し、結晶の対称性と物質のマクロな物理的性質が密接に関係していることを理解する。さらに、結晶構造を調べる回折法とその原理について学ぶ。
1.結晶学の基礎 (結晶形態、ステレオ投影、対称の要素、1・2・3次元結晶)
2.点群 (群の定義、回転対称操作、点群) 3.空間格子と逆格子 (結晶軸と格子面、逆格子、結晶系、ブラベー格子) 4.空間群 (らせん軸と映進面、空間群の記号、International Tableの活用法) 5.結晶構造 (金属、半導体、絶縁体の原子間結合の性質と構造、イオン半径 fcc,bcc,hcp構造、fcc格子をもつ構造、複雑な結晶構造(準結晶、変調構造)) 6.結晶の対称性と物理的性質 (物理量のテンソル表現、点群操作の変換則、
ノイマンの原理、ベクトル量、2階テンソル、3階テンソル) 7.原子散乱因子と結晶構造因子
(回折の運動学的理論、ブラッグ反射と逆格子、結晶対称性と消滅則) 8.物質構造へのフーリエ解析の応用
(フーリエ変換の性質、自己相関関数、乱れた構造、ゆらぎ、動的構造因子) 9.結晶構造を見る (いろいろな回折法と顕微法の原理と実際)
1.C. Kittel : Introduction to Solid State Physics, 9th ed., Ch.1-3, John Wiley & Sons
2. P.J. Brown and J.B. Forsyth: The Crystal Structure of Solids, Edward Arnold
3.桜井敏雄:X線結晶解析(掌華房、物理科学選書2)
4.日本結晶学会編「結晶解析ハンドブック」共立出版
5.加藤範夫 :X線回折と構造評価, 朝倉書店
6.仁田勇 :X線結晶学 上, 丸善
7.藤永茂、成田進: やさしい群論入門, 岩波書店
8.今野豊彦: 物質の対称性と群論, 共立出版
9.M.Glazer, et al.: Crystal structure analysis for chemists and Biologists,
特になし
期末試験の成績で評価する