超流動・超伝導-目で見える量子現象
量子現象が目に見える形で現れている超流動、超伝導の簡単な説明を行う。また、1原子の電子状態の実空間測定をも可能にしているSTM/STS技術(走査トンネル分光顕微鏡法)を紹介し、それを用いた超伝導実験(超伝導ナノサイエンス)、特に、超伝導量子渦糸の実空間・実時間測定、渦糸芯の電子状態測定等について話す。電気伝導の量子化、その可視化についても紹介する。
1. 低温物理学のはじまり
ヘリウム液化と物性物理学、なぜ冷やすのか
2. 超流動
(1) 量子液体、ヘリウムの相図(4He,3He、3He-4He溶液)
不凍液体ヘリウムと熱力学第3法則
(2) ヘリウムの比熱
(3) Bose-Einstein凝縮
(4) 超流動ヘリウムの不思議な性質
・超流動(粘性測定)・噴水効果、熱機械効果・超熱伝導
(5) 超流動-2流体模型、第2音波
(6) 超流動と素励起-超流動ヘリウムの素励起曲線
(7) 渦の量子化
3.超流動
(1)基本的な性質
・完全導体・マイスナー効果・臨界磁場・磁化、凝縮エネルギー、
・第1種、第2種超伝導体・磁束の量子化、混合状態・超伝導エネルギーギャップ
(2)現象論的な超伝導の説明―マイスナー効果、磁束の量子化
(3)BCS理論
1.クーパー問題-フェルミ面の不安定性
2.電子-フォノン相互作用
3.BCS理論
基底状態の波動関数、エネルギーギャップ、励起状態
有限温度の超伝導体の性質
4.超伝導体のトンネル分光
5.Bogoliubov-de Gennes方程式―BCS理論の拡張
BdG方程式、アンドレーフ反射、超伝導体の不純物の影響
(4)Ginzburug-Landau理論
1.Landauの2次相転移の理論
2.Ginzburug-Landau 方程式
3.コヒーレンス長、磁束侵入長、GLパラメーター
4.第2臨界磁場
5.界面エネルギー
6.Hc1、超伝導量子渦糸
7.渦糸状態-Abrikosov格子
(5)超伝導ナノサイエンス-
量子渦糸状態の走査トンネル分光法による実空間観測
4.現代物性物理実験の一側面
量子ビームの利用(特に、ミュオンスピン回転緩和法と表面界面薄膜研究)
超流動、超伝導は量子現象が目に見える形で現れている現象である。これらの現象が如何なるものであるかを実験結果から学ぶとともに、今まで学んだ量子力学、量子統計力学の知識に基づきこれらを理解する基本的な理論を理解することを目的とする。また、最近の新しい実験技術、特に、電子状態を原子長空間分解能で測定できる走査トンネル分光法を用いた新しい実験についても学ぶ。
実験をできるだけ多く紹介しながら、超流動、超伝導の簡単案説明を行う。
参考書
超流動:「超流動」山田一雄、大見哲巨著(新物理学シリーズ28、1995、培風館)、「超伝導・超流動」恒藤俊彦著(現代の物理学 17、岩波書店 1993)
量子力学、量子統計力学を学んでいることが望ましい。
出席と課題レポート。
できるだけ実験を紹介するので、出席してほしい。質問は歓迎する。