古典力学、決定論的な時間発展法則は長い間誤解されていた。決定論的な発展法則のうち一部のカテゴリーに属するものをあたかも決定論的な発展法則の全てがもつ特質であるとしたことに誤りがあった。古代の哲学者エピクロスはその隘路に気がついていたが、やはり誤解されてしまった(Karl Marx, thesis“The Difference Between the Democritean and Epicurean Philosophy of Nature”,1841)。 カオス理論の発見によりこの誤解が解けたかに見えるが、まだ不十分である。カオス理論はまた、初期条件に対する鋭敏さがノイズに対する脆弱さを生むのではないか、との新たな誤解を生み出してしまっている。そうした誤解を解くのが本講義の目的である。
1.決定論的な時間発展と予測不可能性が両立する機構としてのカオス
2.ノイズに対すロバストさと初期条件に対する鋭敏さが両立する機構としてのカオス
3.カオスを超える不規則さ
受講者には、健全なる良識を求む。