日本における「近代」というテーマで講義する。いくつかの日本思想史上のトピックを取り上げて論ずる。
現在、多くの日本論や文化論の類が流通しているが、ステレオタイプの類型論や根拠薄弱な決めつけも少なくない(この講義もひょっとするとそうかもしれない)。ある言説が信頼に値するものか否か、歴史や多様な視点を参照しつつ吟味しうる批判的思考力が切実に求められるといえよう。
この講義は、わずか半年間の開講ではあるが、
(1)日本の思想と歴史に関する知識・教養を深めること。
(2)資料を読解し、自分なりに考察を加え、説得力ある論を構築するという人文科学の基本的手法を知り、各自レポートで実践すること。
を通じ、現代において広く応用可能な批判的思考力を身につけるための機縁となることを目的とする。
第1回 はじめに
第2回以降は、以下のトピックについて、必要に応じて時代を行きつ戻りつしながら順次取り上げる。
【明治後期】
・日本を旅行する外国人 イザベラ・バード『日本奥地紀行』(1880(明治13))から
・憧れのムスメ ピエール・ロティ『お菊さん』(1887(明治20))から
・女学生文化 小杉天外『魔風恋風』(1903(明治36))から
・立身出世志向とその行き詰まり 夏目漱石『それから』(1909(明治42))から
【大正期】
・日本のふるさと「大和」の再発見 和辻哲郎『古寺巡礼』1919(大正 8)から
・都市生活と若者 谷崎潤一郎『痴人の愛』1924(大正13)、江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」1925(大正14)から
・歴史とは何か 平泉澄「歴史における実と真」(1925(大正14))から
【昭和戦前期】
・機械の美 板垣鷹穂『機械と芸術との交流』1929(昭和 4)から
・「空気」を読みあう集団 和辻哲郎『倫理学』1937(昭和12)から
・南島のユートピア 沖縄言語論争(1939(昭和14))から
毎回プリントを配布。参考文献は講義の中で随時紹介する。
この科目は、平成18年度以降の入学生には文系科目、17年度以前の入学生には文系基礎科目の単位として認定されます。
二回のレポート提出を必須とし、その内容によって評価する。詳細は初回の授業で説明する。
まず無いとは思うが、人数制限をする場合があるので、一回目の授業に必ず出席すること。
e-mail:hatter@valdes.titech.ac.jp
推奨学期:3学期
連 絡 先:大岡山西9号館9階912号室(内線2374)