古来、哲学は、「存在する」「ある」といった概念について学問的に探求することを課題としてきました。人間自身にとって「ある」ということは、「生きている」ということですが、生きているとはどのようなことでしょうか。人間にとって生きているとは、いつかどこかで生を与えられ、また、いつかどこかでその生を終えるまでの間、与えられた身体をもってさまざまな行為を選択し、またさまざまな出来事に出会いながら、自己の生を維持することです。つまり、「生きている」ことの意味は、身体、行為、所有、選択、遭遇、出来事、時間、歴史、空間、環境、世界などの概念によって理解されることになります。哲学の研究対象は、まさに、概念そのものです。こうした概念を深く探求することによって、わたしたちは、自分自身の存在の意味や生きることの意味について、あるいは、わたしたちの生が与えられている場としての世界の意味を考えることができます。概念そのものを考察の対象とするというのは、大変抽象的な作業ですが、本講義は、一人ひとりの「生きている」ということに即して、人間にとってあるということを理解するための基本的な概念について思索を展開したいと思います。
哲学的にものを考えるとはどのようなことか、自然科学の考え方とどのように異なっているかということについて考えながら、哲学的な思考の方法を理解し、また少しでもそのような思考の方法ができるようになることを目的とします。また、日常的な経験のなかにどのような哲学的な問題が潜んでいるか、その発見の方法についても考えたいと思います
1.哲学とは何か
2.所与と遭遇と選択
3.所与
4.遭遇
5.選択
6.身体
7.環境
8.所有
9.歴史
10.個と普遍
11.行為と価値
12.理性と感性
13.哲学と科学
14.哲学と倫理
15.深い思索のために
【授業の進行状況等必要に応じて変更する可能性があります】
この授業では、決まった教科書は使わない予定です。
この科目が履修可能なのは、一年生だけとします。
講義のなかで行う2度のレポートによって評価します。講義への出席とともに、少なくとも4册の哲学書を読むことを条件にします。文献については、授業のなかで指示します。
哲学的議論のおもしろさを楽しんでいただければと思います。
推奨学期:2学期
連 絡 先:大岡山西9号館9階916号室 桑子研究室