日本思想史   Intellectual History in Japan

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担当教員
畑中 健二 
使用教室
金1-2(H121)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
0153
シラバス更新日
2013年3月28日
講義資料更新日
2013年3月21日
学期
前期  /  推奨学期:3

講義概要

 日本における「近代」というテーマで、テキストや図像に即して論ずる。

 漱石は、博覧会の華やかなイルミネーションを「当世」の象徴とし、流行に遅れまいとそれを見に押し寄せる明治の「当世的」人々を描いている(『虞美人草』)。大正期に来日したアインシュタインは、日本では電灯が無駄に多いとつぶやいたそうだし、今も(少なくとも震災後に節電が叫ばれるまでは)街の盛り場やデパート、コンビニ、自販機などは煌々と明かりをともしている。

 文〈明〉開化以降、なぜこうも人工的なまばゆい光が求められてきたのだろう? 私たち自身が当たり前に感じている明るさは、実は異様なものともいえないか? 闇や暗さに価値を認めた人はいなかったのだろうか? こうした問題を照明や採光の歴史としてでなく、また単なる嗜好や国民性として片付けるのでもなく、本講義では近代という時代特有の思想・精神のあり方と絡めて考えるという大風呂敷を広げてみたい。光と闇、陽と陰の文化的含意を参照しつつ、日本近代思想史を振り返ると、何が見えてくるだろうか。

 なおこの授業自体は、午前の開講にも関わらず、しんみり陰気な雰囲気で進むことになろう。

講義の目的

 現在、多くの日本論や文化論の類が流通しているが、ステレオタイプの類型論や根拠薄弱な決めつけも少なくない(この講義もひょっとするとそうかもしれない)。ある言説が信頼に値するものか否か、歴史や多様な視点を参照しつつ、吟味・批判しうる知性が各自に切実に求められるといえよう。

 この講義は、わずか半年間の開講ではあるが、
(1)近代日本の思想と歴史に関する知識・教養を深めること。
(2)資料を読解し、自分なりに考察を加え、説得力のある論を構築するという人文科学の基本的手法を知り、各自レポートで実践すること。
を通じ、受講者にとってそうした知性を求める機縁となることを目的とする。

講義計画

第1回 はじめに:光と啓蒙と近代
第2回 闇の魅惑─谷崎潤一郎から
第3回~
 光と闇という観点から以下の19世紀~20世紀の一見雑多なテキストを順次取り上げる。毎回それを切り口として当時の思潮を紹介し、検討を加える。
平田篤胤『仙境異聞』(1822)
福澤諭吉『学問のすすめ』(1872-1876)
ピエール・ロティ『お菊さん』(1887)
夏目漱石「現代日本の開化」(1911)
サックス・ローマー『怪人フー・マンチュー』(1911-1912)
江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」(1925)
中井正一「思想的危機における芸術ならびにその動向」(1932)
島田啓三「冒険ダン吉」シリーズ(1930年代)
坂口安吾「日本文化私観」(1942)

教科書・参考書等

毎回プリントを配布。参考文献は講義の中で随時紹介する。

関連科目・履修の条件等

この科目は、平成18年度以降の入学生には文系科目、17年度以前の入学生には文系基礎科目の単位として認定されます。

成績評価

二回のレポートによる。原則として提出されたレポートは希望者には添削して返却する。
なお参考までに、2012年度の本講義登録者のうち合格者は42.6%だった。

担当教員の一言

まず無いとは思うが、人数制限をする場合があるので、一回目の授業に必ず出席すること。

その他

推奨学期:3学期
連 絡 先:大岡山西9号館9階912号室(内線2374)

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