線形代数学第一 W   Linear Algebra I

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担当教員
池田 和正 
使用教室
水1-2(S634)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
1111
シラバス更新日
2012年5月13日
講義資料更新日
2012年5月13日
学期
前期  /  推奨学期:1

講義概要

I 理学および工学に必要な線形代数学の基本を修得する。線形代数学第二(A又はB)に継続する。講義のよりよい理解のために線形代数学演習第一をあわせて履修すること。
II 複素数,行列,行列式,連立一次方程式の解法,ベクトル空間など。

講義の目的

(1) 線形写像は, 小学校で習った正比例の, ベクトルへの自然な拡張で,
線形空間は, 原点を通る直線や平面の自然な拡張です.
こうした, 自然界に広く存在し, 後期以降の科目でも頻繁に顔を出す, 線形構造に触れます.
ベクトルや行列の計算に慣れ, 階数, 行列式, 逆行列, 固有ベクトル, 種々の標準形が出せるようにします.
まず, 2次行列の復習から始めます. 幾何的なイメージを重視し, 前期では,
空間, および4次元の線形写像の話までは最低したいと考えています.
後期は n 次元や複素係数の場合に拡張していきます.
一次変換は, 1996年3月卒の人までは, 高2の代数幾何で, 文理共通で習っており, 高校生でも深く理解していました.
現在では高3の数Cの範囲になり, 数年後からの新課程では,
削除されるという困った事態になっていますが, しっかりついてきてください.
(2) 数学的, 論理的に書かれている文章を速く正確に読み取れ,
また, 記述することができるようになること.
(3) 溢れる情報の中から, 適切なものを選択し,
真実性を検証し, 正しく判断できる推論能力を育成すること.
そのために, 与えられたものの真偽を疑い, 根本から洗い直し,
再構築する態度を身につける.

講義計画

教科書に沿って進め, 60分講義, 30分小テストをする予定です.
日本人で, ノーベル経済学賞に最も近いとされる数学科出身のある学者がシカゴ大学で教えていたときには,
毎回, 試験形式で授業をやっていたそうです. 問題を配って, 解かせながら, 机間巡視を行い,
質問に答える形式は, 数学のような思考系の科目の学習には最も効率が良い講義法です.
他人の話を聞いたり, 本を読むより, 自分の頭で問題を考えて, 自分の手を動かして計算した方が
ずっと理解が進みます. 私も, TA が付く大学ではこの方法をとっています. TA が付かない場合も
複数回の中間試験という形でこの方法を行ったこともあるのですが,
作問や採点に膨大な手間がかかるため止めました.
小テストは, これらの代替物です.
小テストは, 授業のフィードバックの意味もありますが,
わからないことの質問や, 教室の不具合(寒い暑い, 暗い眩しい,
広くて声が聞こえない, 黒板が遠い小さい隠れる白くなる
チョークの乗りが悪いetc.)の文句も書いていただいて構いません.
多数意見の場合, 大学側へ報告して, 教室変更などの交渉をします.
授業に集中してもらうため, プリント配布は, なるべく,
1講義1枚までに留めます.
部屋が暗くなると眠くなるし, ノートが取りにくいので,
OHP やパワーポイントによる授業は行いません.
他人のノートの複写などの資料を集めて安心してしまうことのないように.
試験の日程など, 変更の可能性があるので, 授業中の指示を聞き逃さないこと.
回 実施日 内容
01 04/07 正比例と線形性, 行列の積, 零因子, 非可換性, 零行列, 加法の単位元, 単位行列, 乗法の単位元.
02 04/14 転置, 内積, 対称行列, 交代行列, 上三角行列, 下三角行列, 回転, 折り返し, 正射影,
連立方程式を行に関する基本変形で解く.
03 04/21 逆行列. 行に関する基本変形で逆行列を出す.
04 04/28 階数. rank(拡大係数行列)=rank(係数行列)+1 だと解なし.
☆ 05/05 こどもの日で休み.
05 05/12 列に関する基本変形. 基本変形を表す行列. {\rm rank}A={\rm rank}{}^tA. 列ベクトルの一次独立な最大本数.
2本のときの一次独立. 3本のときの一次独立.
06 05/19 行列式の幾何的意味. S_n, あみだくじと sign(σ), 差積, 転倒数,
det A=∑_{σ ∈ S_n}sign(σ)Π_{i=1}^n a_{iσ(i)}. サラスの方法.
☆ 05/26 創立記念日で休み.
07 06/02 行列式の行に関する多重線形性. 交代性. 行に関する基本変形. 上三角行列の行列式.
\det A=det tA. det (AB)=(det A)(det B). クラメールの公式. 余因子行列と逆行列.
08 06/09 前期中間試験.
09 06/16 中間の復習. ラプラス展開.
10 06/23 2次の行列式は平行四辺形の符号付き面積. 外積を特徴付ける3つの3性質.
11 06/30 3次の行列式は平行六面体の符号付き体積. n 次の行列式の幾何的意味. 巡回行列の行列式.
ファンデルモンドの行列式. 平面の式.
12 07/07 3直線と行列式. 固有値. 固有ベクトル. 対角化, 行列の $n$ 乗. 固有方程式. スペクトル分解.
13 07/14 マルコフ過程. 確率行列の $n$ 乗. 定常状態.
14 07/21 線形空間. 閉じている. 体. 環. 加法群. 一次独立と一次従属. 「ならば」の否定. ベクトルが1本のとき.
ベクトルが2本のとき. ベクトルが3本のとき.
15 07/28 前期期末試験.
シラバスを一度決めたら2度と変えないといった, お役人的姿勢はとリません.
生徒の大半を置いてけぼりにするような講義では意味がないので, 生徒の顔を見たり, 小テストで理解度を調べながら,
臨機応変に取捨選択して講義します.
手に取って扱える具体例を挙げて講義し, 定義→定理→証明の羅列といった抽象論は避けます.
なお, 学校は接客業ではないので, 「満足度」の向上を目指して授業することはありません. 「満足」は「幸福」と同じで,
よそ様から与えられるものではありません.
今, 辛い思いをして頑張ると, あのとき勉強してて良かったと, 30歳, 40歳になって感じます.
逆に, 怠けて楽をすると, 勉強しておけばよかったと将来, 痛切に感じることになります.
そのときになって初めて, 過去の自分の態度が満足いくものであったかどうかが判断できるようになります.
教室で「熱意」を演出することもありません. 黒板に向って淡々と授業をします.
年配の知人が電話での「熱心」な勧誘に根負けして, あるサービスを購入したことがあります.
初期契約が30万円, その後事あるごとに請求書が来て大変な目に会いました.
「熱意」とは内容をカモフラージュする道具の一つだととらえた方が賢い社会人になれます.

教科書・参考書等

「線形代数」・池田和正・日本評論社

関連科目・履修の条件等

線形代数学演習第一をあわせて履修すること。

成績評価

小テスト約30%, 中間試験約35%, 期末試験約35%の割合で評価する.
中途の成績に応じてレポートを課す人が出ることもある.
小テストは出欠の確認を兼ねるので, できなくても必ず提出すること.
人の話を聞くのは勉強の内に入らないから自分でやれという先生と,
授業に出てちゃんとノートを取れという先生と2種類いると思います.
前者の立場では出席点は不要ですが, 後者の立場では出席点を評価する
ことになります. この授業では後者の立場をとります.

担当教員の一言

2009年度の日本のGDP(国内総生産)を調べると, 名目, 自国通貨ベースで
1992年の額にまで低下しています. その間, アメリカは2.3倍に,
中国は5倍に伸びています. 国内の仕事が減るということは,
国内に就職口が無いことを意味しますから, 由々しき事態です.
こうした時代に頼りになるのは, 自分自身の能力です.
3年生になると, エントリーシートの書き方や,
面接の受け答えの仕方を慌てて対策
する人がいます. しかし, こうした付け焼刃的な方法では, 進学や就職先の
人事担当者をごまかすことはできません.
1,2年生の今から, 日々真面目に努力して, 真の実力を身に付けてください.
予習では, 教科書の該当箇所を事前に読んで,
問題を解く. 授業では, 予習でわからなかった所に意識を集中して聞く.
復習では, 予習のときにできなかった問題を, 何も見ないで
再度解くことを試みるとよい. こうすると, 効率的に「自ら生きる力」が身に付きます.
他科目もしっかり勉強して「優」の割合が3分の2以上になるように頑張って欲しいです.
i. 便所は休憩中に行っておくこと.
ii. 授業中に歩き回ったり, 無駄口をしないこと.
iii.授業中にメールやwebの閲覧, ゲーム, 飲食喫煙などしないように.
iv. 教室内を無許可撮影, 録音などしないように.
v. 教室に私物やごみを置きっぱなしにしないように.

その他

【試験時の注意】
I. 訂正等がある場合, 前の黒板のみに書いて告知します. 良く見えるよう前の方に座ること.
II. メモなどを机の中や椅子の下に置かず, 鞄の中にしまい口を閉めること.
III. 周りの人の答案を見たり, 見せたり, 見られたりしてはいけません.
IV. 携帯や電子辞書のスイッチは切ること. 電卓, 時計としての使用も認めません.
V. 写真のついた学生証, 忘れた場合は事務の発行する仮学生証などを机上に置くこと.
VI. 成績を付けるためには, 正確な名前と番号が必要になります. 教官名は不要です.
VII. 答えだけでなく, 解答用紙に収まる程度の簡潔な説明も書くこと.
VIII.解く順番は自由ですが, 問題番号順に書くこと.
IX. - が薄く残っているなど複数通りに読める解答は不正解とします.
X. 答がどこにあるかを四角で囲むなどして明示すること.
XI. 解答用紙のみを回収します. 返却はしません.
XII. 解答用紙を枚数管理するので, 過不足なく提出すること. 複数枚の場合はちぎらないこと.
XIII.自分の書いたことを忘れる人は, 自己採点用に別紙に答を転記しておいて下さい.
XIV. 個別の得点は不開示です. 反対者がいなければ一括開示します.
XV. 追試, 再試, 期末後のレポート課題は行ないません.
XVI. 進級, 進学, 就職の都合での成績の変更は行いません.
XVII.次回の定期試験の範囲は今回の試験より後に講義した内容となります.

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