音楽の効用は、音楽そのものを鑑賞したり、合わせて踊ったりするばかりでなく、映画や映像、ゲームとのコラボレーション、更に音楽セラピーに用いるなどその利用分野はますます広がっている。一方、テクノロジーの発達は音楽制作の周辺を一変させている。コンピュータ・コントロールによる音楽制作の実際を、クラシックの和声学とジャズ・ポピュラーの理論の双方を学びながら、授業の最後に行う作品発表会へ向けて、各自オリジナル作品の制作を課題とする。担当は、「サザエさん」の音楽などで活躍中の本学出身の作曲家・特任教授・河野土洋(かわの・くにひろ)。
理工系学生のクリエイティブなセンスを刺激する上で、アートの世界に触れてみることは非常に大切なことです。中でも、音楽は神が人間にのみ与えたコミュニケーションツールであり、ことばや絵に描いて上手く伝えられない場合の表現方法のひとつでもあります。人が人に喜んでもらえるような音楽を作曲するという創造の喜びの実体験は、科学・技術を追い求めていく上で新たな探究心を刺激するものであります。
1:【はじめに/自己紹介/授業の進め方】
・「東工大で音楽」の意味/音楽はメッセージ
・目標・目的を持った「ものつくり」「デザイン」/誰に聞いてもらうか
・自己完結、自己満足に陥らない
・音楽は「時間」の要素大/聞き手の時間を頂く
・神の環境 人間にのみ与えられた表現伝達方法
・物理現象 複数の音がぶつかっても変質しない奇跡
・「音楽」と書くが、音を楽しむことではない
・(東工大の2単位)/先輩の作品
2:【曲の作り方 (楽器/ツール/ソフト)】
・シンセサイザー/ワークステーション
・音を制御する/MIDI規格とは
・音色(programNo)長(gate)・高(pitch)・強(velocity)の制御
・電子楽器、電気楽器、生楽器acoustic
・歌もの(歌詞)と器楽曲
・Emotionから音楽を作る
・部品から作り上げる
・作品名(タイトル)は重要
3:【楽典(基本知識)】
・五線 ト音記号
・記譜、採譜、耳コピー
・音楽形式(二部・三部形式)
・マーチ・メヌエット・ワルツなど
・音度degree
・長2,3,6,7短2,3,6,7
・完全、増、減
・音楽の三要素
4:【理論】(基礎1) メロディ/音程と音階
・音階(長調、短調)/メロディ
・世界共通ピッチと音階(平均律)
・(世界共通言語→英語)
・(特殊)ブルーノート
5:【理論】(基礎2) ハーモニー
・和音の構造・成り立ち
・三和音(トライアド)(トライトーン)
・変位音/偶成和音
・メロディへのコード付け
6:【理論】(基礎3) ビート
・2,4,8,16拍子
・ダンスミュージック
・ラテン
7:【理論】(応用1) リズム
・3拍子系
・変拍子
・ポリリズム
・5拍子、7拍子
8:【理論】(応用2)コードの種類と使い方
・コード・トーン/コード・ネーム
・テンション・コード/サブ・コード
・sus4 dim. aug.
・ケーデンス TSD機能
9:【理論】(応用3) コード進行
・two-five /ダブル・ドミナント
・ドミナント・モーション
・代理(サブ)コード
・転調/ブルースコードなど
10:【理論】(応用4) 編曲 オーケストレーション
・ヴォイシング(closed/open)
・ハーモナイズ(2,3,4voices)/drop2,3
・アプローチ/オルタード・ドミナントA
・クロマチックA/ディミニッシュトAなど
11:【録音(ミキシング/マスタリング)】
・音楽を「記録」する
・楽器の定位panとバランス
・effect/リバーブ/ディレイ/イコライザー
・スタジオ録音、ホール録音
・レコーディングの歴史
・アナログからディジタル
・SP.LP.EP、磁気テープ、CD、SD・・
12:【音楽の効用】
・ミュージックセラピー
・音楽を「記憶」する
・音楽と脳
・サヴァン/アスペルガーなど
13:【作品発表会(1)】クラス半数
14:【作品発表会(2)】クラス半数
15:【作品の評価とまとめ】
・時代と音楽と流行
・同時代に受けて、50年、100年後まで伝承される
・芸術的、芸術家、芸術作品
・art, artistic, artificial
必要に応じて講義中に紹介する。また多種多様の音楽を数多く視聴する。
全学的に行うため、どの学年での受講可能であるが、1または2年生の受講が望ましい。
また、各自、音楽作品を制作し、この提出を最終の課題とするので、多少のパソコンの知識と、
ノートパソコンを持っていることがのぞましい。(パソコンによらない作品も可。)
人数制限をすることがあるので、1回目の授業に必ず出席すること。
最後に行われる自作の作品発表会での評価、出席数、レポートなどから判断し決定する。
音楽の授業ですから、なるべく多くの映像や音楽を実際に見聞きします。
また、パソコンで音楽を作る前に、実際にキーボードやパーカッションを実体験して、「人と音楽」の関わりを追究探究します。
連絡先:世界文明センター(内線3892)