日本の近代化は、アジアではまれな成功例であった。だが司馬遼太郎は、昭和前期については「別国の観がある」と嘆いた。日露戦争までは「坂の上の雲」を追いかけていればよかった。政治家も企業家もフロンティアを目指していた。軍事大国として「五大強国」などと持て囃されているころに国際社会の権謀術数に巻き込まれていったのだ。
当時、内閣がころころ変わっていた。平民宰相と呼ばれた大正10年(1921年)に原敬が暗殺されてから昭和16年(1941年)の東條英機内閣誕生まで内閣の平均寿命は一年余り。そのかげで奇怪な官僚機構が生み出され、陸軍大臣が知らぬうちに特務機関が中国大陸で謀略事件を起こすような国になっていた。
敗戦からスタートした戦後はどうか。思いがけずに「経済大国」になったが、高度経済成長を経て目標を達成すると、再び曲がり角を迎え迷走している。冷戦崩壊後の20年間で、小泉内閣の5年半を除けば首相の平均寿命は昭和前期と同じく一年余りでしかない。
日本国はなぜ同じ轍を踏むのか。宿命の影はどんなかたちで尾を曳いているのか。「いま」を見つめながら、「近代」「現代」を分析したい。
日本の近代化は、アジアではまれな成功例であった。だが司馬遼太郎は、昭和前期については「別国の観がある」と嘆いた。日露戦争までは「坂の上の雲」を追いかけていればよかった。政治家も企業家もフロンティアを目指していた。軍事大国として「五大強国」などと持て囃されているころに国際社会の権謀術数に巻き込まれていったのだ。
当時、内閣がころころ変わっていた。平民宰相と呼ばれた大正10年(1921年)に原敬が暗殺されてから昭和16年(1941年)の東條英機内閣誕生まで内閣の平均寿命は一年余り。そのかげで奇怪な官僚機構が生み出され、陸軍大臣が知らぬうちに特務機関が中国大陸で謀略事件を起こすような国になっていた。
敗戦からスタートした戦後はどうか。思いがけずに「経済大国」になったが、高度経済成長を経て目標を達成すると、再び曲がり角を迎え迷走している。冷戦崩壊後の20年間で、小泉内閣の5年半を除けば首相の平均寿命は昭和前期と同じく一年余りでしかない。
日本国はなぜ同じ轍を踏むのか。宿命の影はどんなかたちで尾を曳いているのか。「いま」を見つめながら、「近代」「現代」を分析したい。
◇『昭和16年夏の敗戦』……日米戦争に勝つと思っていたのか
◇「皇居は空虚な中心である」とフランスの哲学者ロラン・バルトが述べている。東京独特の歴史と風貌を考察しながら、現在の政策の分析を示していきたい。
◇1948年12月23日、A級戦犯・東條英機(元首相・陸軍大将)が処刑された。なぜ皇太子・明仁(現天皇)の誕生日だったのか。隠されたメッセージを読み解く。
◇東工大はなぜ大岡山にあるのか? 前身は蔵前の東京高等工業だが、なぜ?
◇田園調布が東急沿線にあるのはなぜか?
「通勤ラッシュ」という日本独特の世界……、サラリーマンの誕生
◇プリンスホテルの謎……「ミカドの肖像」をめぐって
猪瀬直樹著「昭和16年夏の敗戦」「ミカドの肖像」、「土地の神話」
その他、講義中に指示する。
人数制限をすることがあるので、一回目の授業に必ず出席すること。
講義ごとにフィードバックとして小レポートを提出してもらう。期末レポートを課す。
連絡先:世界文明センター(内線3892)