現代社会は複雑怪奇で,私たちの理解が及ばないことが数多く発生しています。本授業では,現代社会を眺める視点を様々な角度から学ぶことで,社会を見る眼を養うことを目的としています。たとえば,リスク社会の問題,階層格差の問題,電子メディアとIT革命の問題,家族崩壊の問題,公共性の問題などを題材にして,現代社会を読み解く術を学びます。
今年度はケア(配慮・手助け)を対象にして、《共生の原理―ケアが開く新たな社会》というタイトルで講義をします。ケアはこれまでもっぱら、高齢者、身障者、病人に対する介護や看護や世話を表す言葉として、医療や社会保障分野の用語として用いられてきました。しかし、哲学や社会科学の分野で培われてきた英知によれば、ケアは人間存在にとって極めて重要な意義を持つことがわかります。ケアは人が他者に開かれた存在となり、「他者と共に在る」ための、つまり、共生社会の基礎となるものです。他者を出し抜くことを厭わない成果主義の競争原理では、ケア力が評価されず発揮されないので、しばしば暴力が発生します。競争社会では、他人の自由や権利を妨害しなければ、何をしてもかまわない、他人が傷ついても仕方がない、ということになりがちです。本講義では、ケアを基礎とした共生社会の原理について多角的に考察を進めます。
0.イントロダクション
1.他者と共に生きるーケアとは何か
2.倫理の構造改革ー正義は万能ではない
3.家族の受難と将来世代へのケアリング
4.ゆがめられた教育と人間力
5.福祉を捉えなおす
6.生き方と生活政治
7.共生配慮型の社会へ
必要に応じて資料を配布します。
この科目は、平成18年度以降の入学生には文系科目、17年度以前の入学生には総合科目Aの単位として認定されます。なお、この科目は原則として一年生だけを対象とします。
レポート提出
競争至上主義社会に疑問を感じたり、治安と安全性が低下していることに懸念を抱いている皆さんには参考になるはずです。
なお、人数制限をする場合があるので、一回目の授業に必ず出席すること。