物理学においては、第一原理が分かっていれば、そこからすべて演繹的に導くことができるという形式が取られる。しかし、現実の物理現象を理解するためには、対象や操作に意味を付与しつつ
より高次の論理を展開する。量子力学においては論理のレベルの混同からいろいろなパラドクスが生まれる。そのことを語って見たい。そこのキーワードは情報である。
前半の講義では物理学の中にある「論理」の問題点を論じる。「物理」を文字どおり「物のことわり」と理解することは、「数学」を「数についての学問」と思うことと同じくらいに甚だしい誤解である。数学者が数自体に付いて語ることは極めてまれであり、物理学は物質そのものを扱うわけではない。
物理学にあらわれる重要な概念の中には、むしろ「もの」なのか「こと」なのか判然としないものが多いようである。それらの中から以下の量子力学と情報を取り上げて、批判的に吟味してみよう。
(1)量子力学
光子の裁判、量子状態、量子力学の公理、測定理論、不確定性関係の修正
(2)情報あるいはエントロピー
古典情報理論のおさらい、マックスウェルの悪魔、量子情報、量子計算
後半では、論理学において「もの」と「こと」が区別が付くかという問いを発して講義を進める。
前半の量子力学においては色々なレベルの「論理」が出て来て、そのレベルの違いを混同することにより種々のパラドクスが生まれていることが概観できる。
・参考書等 “Quantum Paradox” by Aharonov (amazonで入手可能)
この科目は、平成18年度以降の入学生には総合科目、17年度以前の入学生には総合科目Bの単位として認定されます。
レポートによる。
講義で取り上げるテーマ自体が余り論じられることがない内容なので、講義自体として興味深いと思う。また科学方法論の講義として聞いてもよい。
なお、人数制限をする場合があるので、一回目の授業に必ず出席すること。