映像文化論 大岡山   Image Study

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担当教員
高橋 世織 
使用教室
金9-10(H111)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
0868
シラバス更新日
2010年9月27日
講義資料更新日
2010年9月20日
学期
後期  /  推奨学期:2,4,6,8

講義概要

映画はムービング・ピクチャーというように既存の長い歴史を持つ絵画・美術史とそのフレーミングをなぞっていることを、黒澤明やチャップリン等を事例に検証します。リュミエール兄弟の起源いらい《労働》、《食事》、《祝祭・祭礼》の3シーンを主軸にレンズが向けられた映画。チャップリンの「モダンタイムス」(1936)を中心に、機械と身体、労働、スポーツ、声、都市の音響の諸問題を見世物文化の歴史的な射程から再検討。毎回、近代化(モデルニテ)とは何だったのだろう、という大きな問いのもとに講義を進めます。本年は、《声と映像》に特化して考察。

講義の目的

映画を支えている聴覚的要素(音楽、台詞、声、叫び、音響、ノイズ)に関して、今年度は特に声(笑い声)を集中的に考察します。映画=視覚表象文化の枠組みから、大きく解き放つ試みであります。反視覚性、触覚性、私が言うところの《皮膚論的想像力》について考察していきます。
考えてみれば家屋空間も数十年がかりという単位で、我々はさまざまな生活音、音響、声を放出し続けている一種の楽器(instrument)なのかもしれません。音響学、建築や都市デザイン等の専攻学生の旺盛な問題意識にも応答しあいたい。都市のざわめきとは? その中で交わされる言語や呟きとは? 聴覚的共同性とは?
映画という四次元絵画の磁場から、環境や空気(CO2)の孕む21世紀的主題を考えていきましょう。映画は、空気を雰囲気を撮り続けて来た。本講は気や空気の研究の様相も呈しています。

講義計画

1)はじめに《光》とは何か―レンズ仕掛けの近代文明社会を反照する
2)見る/視る/観る/看るの身体文化
  ―チャップリン『街の灯』(1931)をなぞりなおす
3)《声》の肌理(きめ)、谷崎潤一郎とR・バルト
  ―空気振動を介在しない耳体験、音楽体験
4~9)黒澤明「七人の侍」総合研究
  ―「荒野の七人」等との比較、映画における時代考証とは何か、《泥と雨と風》の文化学、道化的身体、様々な戦後観
10)進行しない音楽と映画
  ―J・ケージ「ニアリー・ステイショナリー」、吉増剛造シネマ『キセキ』、ビル・ビオラのビデオ・アート
11)耳人間・寺田寅彦(地球音響物理学者)の映画の観方
12)いま、寺田寅彦の空気観に学ぶ
13)まとめ、空気の研究序説
  ―脱炭素社会構築に向けて映画文化や産業はいかに関与すべきか

教科書・参考書等

参考文献は適時、教場で指示していく。必要なものはプリント配布します。
大橋力著『音と文明』(岩波書店)は刺激的、高橋世織編著『映画と写真は都市をどう描いたか』(ウエッジ選書)は諸論考が参考になるので挙げておく。

関連科目・履修の条件等

文系科目「映像文化論」の単位を取得した学生はこの科目を履修できません。
人数制限をすることがあるので、1回目の授業に必ず出席すること。

成績評価

最後に教場試験をするかレポート実施(初回の授業時に指定)。出席状況も加味。

その他

連絡先:世界文明センター(内線3892)

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