この講義では、病気、健康、生、死などの問題について、キリスト教会の考え方が大きな影響を与えた中世末のヨーロッパ社会に焦点を当て、人びとが病をどのように捉え、病気の治癒、暮らしの改善のためにいかなる手段を講じたか、文化史の観点から学びます。宗教と医学の交差と接合について考える前に、キリスト教文化の基本的コンテクストや図像学を解説しますので、聖書や中世・ルネッサンスのキリスト教美術に関心のある方は大歓迎です。
西洋中世の宗教と医学を学び、「いかに生きるか」と同時に、「いかに老い、病み、死ぬか」という人間学的テーマを複眼的に捉える視座を築くことが目的です。
1回目はガイダンスです。2回目以降は、キリスト教の基本的知識を図像資料を用いて確認し、その後、以下のトピックを扱います。
1.身体と魂の治療:(1)医師キリストと聖母マリア(2)修道院の医学
2.聖人崇拝:奇跡と巡礼の文化
3.ギリシャ・ローマ医学とアラビア医学の継承
4.身体と宇宙
5.職業医と薬剤師
6.健康な心と身体:健康規範(養生訓)
7.ペストの襲来:危機管理と環境の改善
8.中世の病院:身体のケアと魂のケア
9.中世文学のなかの医学・医療
10.ルネッサンス・近世の身体論
英語か日本語の資料を用意します。(英語力は特に問いません。)
論述式のテストを実施し、出席状況を加味して判断します。
1回目の授業に必ず出席してください。
連絡先:世界文明センター(内線3892)