グローバルな正義とは、国際社会の公正さをめぐる一群の思想である。なぜ先進国は開発途上国を支援しなければならないか。各国は国外の労働者を受け入れるべきか。外国人にはいかなる権利・義務が認められるべきか。そもそも、多様な文化や価値観が溢れる国際社会において、統一的な正義を追求することは可能か。以上のような問題をめぐって、その背景と英米の現代政治哲学について講義する。
昨今のグローバリゼーションの進展は社会に様々な変容をもたらし、多くの問題を生じさせている。本講義は、国際的な経済格差や貧困問題(講義計画2-7)、国際社会の文化的多様性とグローバルな正義追求の関係(講義計画8-10)、国境を越えた移動の問題(講義計画11-13)について、英米の現代政治哲学から論じることを目的とする。
1.イントロダクション
2.リベラリズム、平等主義、リバタリアニズム――分配的正義論概観――
3.ジョン・ロールズの国内的正義論と国際的正義論
4.国際社会と経済格差、貧困問題
5.グローバルな分配的正義否定論
6.国際経済体制と加害責任論
7.グローバルな平等主義――グローバルな分配的正義論総括――
8.ナショナリズムとグローバルな正義の追求
9.文化的多様性とグローバルな正義の追求
10.非西洋的な文化的立場による人権の正当化
11.国境を越えた人の移動・移住規制の正当性
12.外国人の人権を巡る諸問題
13.統合政策と多文化主義
14.総括
教科書は特に指定しない。参考書は授業中に適宜紹介する。
人数制限をする場合があるので、1回目の授業には必ず出席すること。
期末試験による。
履修に当たって、国際関係、英米政治哲学に関する基礎知識は特に要求しない。
連絡先:世界文明センター(内線3892)