経済学の基礎を理論分析と実験による検証という二つの手法を用いて解説する。市場取引、物品税、オークション、交渉ゲーム、株取引、破産問題などのトピックスを学習する予定である。
全ての経済学の入門書には、あるいは中学校で習う公民の教科書にさえも、「市場においては、需要曲線と供給曲線が交わるところで取引価格と取引数量が決まる」と書いてある。しかし、我々ひとりひとりは、市場全体の需要曲線や供給曲線がどんな形をしているのかを知らず、自分自身の事だけ考えて勝手に取引しているのに、本当に需要曲線と供給曲線が交わるようなところで価格と数量が決まるのだろうか?あるいは、公共経済学の理論では、各個人は他の人が公共財にお金を出し費用を負担してくれることを期待して、自分はお金を出さないようにするため、結果としてみんなお金を出さず十分な量の公共財は生産されないという、「ただ乗り」の問題が生じると主張する。しかし、NHKの放送料金の負担について考えると、料金を支払わないことに関して明確な罰則がないにもかかわらず、多くの人(?)が料金を支払い、ちゃんと毎日NHKは放送を供給している。公共財供給における「ただ乗り」の問題は実際には生じず、経済学者の考え出した寓話にすぎないのではないか?実験経済学は、経済学の理論が本当に現実の経済現象を説明しているのかというこのような疑問に対して答えようとするもので、近年急速に発達してきた経済学の新しい分野の一つである。実験経済学では、被験者を集め、実験室で経済理論のモデルで想定されている環境を再現し、経済理論の予測の是非が検証されている。需要と供給、公共財の供給、賃金交渉、金融市場、競売、企業カルテル、不確実性下の意思決定等のトピックスに関してさまざまな実験が行われている。この講義では、実際に教室で実験を行いながら、経済理論、実験の方法・手続き、実験結果を学習することを予定している。
扱う予定のトピックス:1)市場:需要と供給 2)物品税 3)オークション 4)交渉ゲーム 5)マッチング・ゲーム 6)証券市場 6)独占とカルテル 7)公共財供給 8)中古車市場
講義資料を配布する予定。
この科目は、平成18年度以降の入学生には文系科目、17年度以前の入学生には総合科目Aの単位として認定されます。なお、この科目は原則として一年生だけを対象とします。
試験、宿題、実験レポートをもとに評価する。なお、病気・事故等の特別の場合を除いて、再試験・追加レポートによる救済措置は取らないので、試験に全力を尽くすこと。
やる気のある人を歓迎する。毎回授業の復習を行うことが必要。ステップ・バイ・ステップで知識を積み重ねて理解していく科目であるから、たまに出席しても講義内容を全く理解できないであろう。必ず1回目の授業から出席のこと
なお、人数制限をする場合があるので、一回目の授業に必ず出席すること。
推奨学期:1学期
連 絡 先:大岡山西9号館8階803号室(内線2677)