物理と論理   Physics and Logic

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担当教員
細谷 曉夫  藁谷 敏晴 
使用教室
 
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
0472
シラバス更新日
2008年10月1日
講義資料更新日
2008年10月1日
学期
後期  /  推奨学期:-

講義概要

総合科目は,従来の学問分野の区分けを超えて,異なる文系同士,あるいは文系と理工系とが融合またはクロス・オーバーするような学際的・広域的テーマにつ

講義計画

我々は日常「もの」と「こと」を自明な区分と思っている。本講義の中心のテーマは「もの」と「こと」に関するこうした区分が妥当であるかに関して二つの観点から考察を行う。一つは論理的観点からであり、一つは物理学的観点からである。
前半の講義は論理的観点からこの二つの区別を分析する。結果は実はこの「もの」と「こと」という区別を人間理性は論理的には正当化できない、ということである。証明方法は
現在標準的に使用されている論理体系を自然言語に更に近くした体系を示し、その体系における定理として「もの」に関する言明と「こと」に関する言明間には論理的な平行性と
相互翻訳可能性を認めることができることを示すことで行う。この結果は単に論理的に興味深いばかりでなく、哲学的・科学方法論的に興味深い。具体的な例は物理学から、本講
義の後半で取り扱われる。
前半の講義では、「もの」と「こと」の区別が実は思いこみの、少なくとも便宜的な区別であることが述べられた。後半はそれを受けての講義である。「物理」を文字どおり「物のことわり」と理解することは、「数学」を「数についての学問」と思うことと同じくらいに甚だしい誤解である。数学者が数自体に付いて語ることは極めてまれであり、物理学は物質そのものを扱うわけではない。
物理学にあらわれる重要な概念の中には、むしろ「もの」なのか「こと」なのか判然としないものが多いようである。それらの中から以下の3つを取り上げて、批判的に吟味してみよう。(各2コマ)
(1)時間と空間
(2)量子状態
(3)情報あるいはエントロピー
それぞれについて、物理学が何を作業仮説としているか、そしてそれを受け入れている根拠になっている実験を一つづつあげる。それらの考察から、物理学者以外の人たち特に文系の人たちが得るであろう教訓について示唆を述べよう。最後の1コマで、これら3つが統一して指し示す将来の理論物理学像を、私の研究に基づいて予想しよう。
この講義で、現代物理学が決して「唯物的」なものではないことを聴衆が理解してくれて、講師自身が「物理屋としての私」を相対化できれば成功と考える。
参考書
ロジャー・ペンローズ著:皇帝の新しい心(みすず書房)
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より詳しい項目
(1) 時間と空間
1-1 物質の運動を記述するには、時間・空間というメタな作業仮説を必要とする。
1-2 時間の定義は観測者の運動しだいである。
1-3 相対論的因果律
(2) 量子状態(これもメタな作業仮説)
2-1 粒子と波動
2-2 量子力学の公理
2-3 観測ということ
(3) 情報あるいはエントロピー(これもメタな作業仮説)
3-1 自然の不可逆性、時間スケールについて
3-2 エントロピー自由エネルギー
3-3 情報量は物理量か?

教科書・参考書等

前半はOHP及び講義録による。
後半は参考書として、ロジャー・ペンローズ著:皇帝の新しい心(みすず書房)をあげる。

関連科目・履修の条件等

この科目は、平成18年度以降の入学生には総合科目、17年度以前の入学生には総合科目Bの単位として認定されます。

成績評価

レポートによる。

担当教員の一言

講義で取り上げるテーマ自体が余り論じられることがない内容なので、講義自体として興味深いと思う。また科学方法論の講義として聞いてもよい。
なお、人数制限をする場合があるので、一回目の授業に必ず出席すること。

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