科学は,実験や観測によって確認された事実に基づいて理論が構築され,またそのような事実によって理論の正否が決定され,さらにそのようにして正しいと決 定された理論によって世界の客観的な描像が与えられる,と考えられている。しかし,実験や観測による事実の確認,事実に基づいた理論の構築,事実による理 論の正否の決定,正しい理論が与える客観的な描像,といった事柄について,哲学的に厳密な考察を加えていくと,常識的な科学観とは異なる実相が浮かび上 がってくる。そして,これらの実相は,認識される世界と認識する人間,およびその間に介在する理論といった3者の関係について,君たちを,より深い理解に 導くであろう。