海岸・海洋工学   Coastal and Marine Hydraulics

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担当教員
灘岡 和夫  栗山 善昭 
使用教室
火3-4(M113)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
7510
シラバス更新日
2011年10月3日
講義資料更新日
2011年9月20日
学期
後期  /  推奨学期:6

講義概要

Ⅰ.海岸・海洋には河川の流れとは異なる様々な種類の流れ(海流・潮流・海浜流など)やいろいろな波動現象(風波・うねり・潮汐・津波など)が存在する。講義では,このような多彩な水理現象の記述・解析のための基礎を講述するとともに,それをベースとして沿岸域の防災や保全について論じる。また,最近重要性を増してきている海岸・海洋環境に関わる諸課題や,総合的沿岸域管理等に関して講述する。
II.1.海の波の物理 2.海の中の流れ(海流・潮流・海浜流) 3.渚の水理学 4.海岸をいかに守るか-波・流れ・砂移動の制御 5.沿岸域の環境問題(概論・閉鎖性水域の環境問題・沿岸浅水域生態系の環境保全) 6.地域環境問題と海洋 7.統合的沿岸域管理

講義の目的

 海洋は宇宙と並んで人類に残された大きなフロンティアの一つであり,最近では,温暖化等の地球規模環境問題に関わる地圏-水圏-気圏での水・熱・物質循環過程を理解する上でキーとなる重要な対象として位置づけられている.海岸域は,海洋と陸域をつなぐ接続域であり,港湾建設など人間活動が盛んな領域であるが,国土の狭い我が国では,海岸近くまで居住空間や道路等が迫り,一方で台風による高波や高潮・津波等の猛威にさらされていることから,如何にして海岸の背後地を防御していくかという防災上の課題が大きなウェイトを占めている.2011年3月に発生した東日本大津波災害はそのことを端的に示している。しかも,今後より顕在化していくと考える地球温暖化に伴う海面上昇や台風の巨大化などに如何にして対処していくかという問題も大きな課題になってきている.また,海岸域は,大きな基礎生産性と高い生物多様性によって特徴付けられる生物的に豊かな領域である.しかし,陸域・外洋域と接しているがゆえに,さまざまな環境負荷を受けやすい構造を持っている.実際,干潟・藻場・サンゴ礁等の重要な沿岸生態系の広範な劣化が進行しており,適切な保全策の立案と遂行が求められている.
 海岸・海洋には,水理学で扱う開水路や管路の流れとは大きく異なった特徴を持つ諸現象が存在する.その最たるものが「風波」「うねり」「潮汐」「津波」などといった様々な波動現象の存在である.さらに,海の中には「海流」や「潮流」「吹送流」「海浜流」といった様々な流れが存在し,海岸・海洋の流体運動をバラエティー豊かなものにしている.これらはいずれも,重力や圧力勾配によって駆動される単純な一方向流れである開水路や管路の流れと比べると,その力学構造がそれぞれ大きく異なる現象である.本講義では,これらの諸現象の基本的な物理過程を理解し表現するための基礎理論を講述するとともに,工学上重要となる海岸構造物への波の問題や漂砂(波・流れによる砂移動)の問題等についても言及する.さらに,最近重要性を増してきている沿岸域の環境問題や水産・海洋資源問題,広域沿岸管理,地球環境問題との関連等について講述し,将来の沿岸環境のあり方について議論する.
 この講義では次の基本事項の習得を目的とする.1.沿岸域における様々な波動現象や流れについての基礎理論を理解しそれらの基本的な物理過程を把握できる.2.それらに基づいて,海岸構造物への波力や沿岸域における漂砂のメカニズムを把握しそれらの制御について論じることができる.3.沿岸域における様々な環境問題について理解の基礎となる重要なポイントについて習得するとともに,将来の沿岸環境のあり方について議論できる.

講義計画

1.イントロダクション (10/4)
  水の波の基礎理論1
2.水の波の基礎理論2 (10/11)
3.波の変形(浅水変形,屈折,回折,反射)および砕波          (10/25)
  構造物に作用する波圧
4.波の発生・発達                   (11/1)
  長周期波(1) 潮汐・セイシュ・高潮
5.長周期波(2) 津波 (11/8)
6.中間テスト                           (11/15)
7.海の中の流れ(1) 潮流・海流・吹送流 (11/22)
8.海の中の流れ(2) 河口流・密度流・海浜流 (by栗山) (11/29)
9.漂砂と海浜変形(1) 漂砂のメカニズム,シルテーション (by栗山) (12/6)  
10.漂砂と海浜変形(2) 漂砂の収支と海浜変形およびその制御 (by栗山) (12/13)
11.沿岸域の環境問題(1) 閉鎖性水域の環境問題 (12/20)
12.沿岸域の環境問題(2) 浅水域生態系(干潟,藻場,サンゴ礁等)の保全(1/10)
13.地球環境問題と沿岸生態系保全,統合沿岸管理           (1/17)
14.水産資源管理,海洋エネルギー・海洋資源開発           (1/24)
15.見学会 (港湾空港技術研究所) (1/31)

教科書・参考書等

なし

参考書等
堀川清司著:[新編]海岸工学、東京大学出版会
宇野木早苗・久保田雅久:海洋の波と流れの科学,東海大学出版会
栗山善昭:海浜変形 -実測,予測,そして対策-,技報堂出版,2006 

関連科目・履修の条件等

水理学原理

成績評価

授業・見学会出席(約20%),見学会レポート(約10%),試験(約70%)

担当教員の一言

問は随時メールで受け付けています。灘岡(nadaoka@mei.titech.ac.jp)
また,火曜日の昼休みを質問時間としますので,気軽に来室して下さい。

オフィスアワー

火曜日の昼休みを

その他

関連する学習教育目標
E
http://www.cv.titech.ac.jp/class/objective_ug.html#kyouikumokuhyou(E)

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