半導体物性   Semiconductor Physics

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担当教員
渡辺 正裕  宮島 晋介 
使用教室
火1-2(S221)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
7127
シラバス更新日
2015年10月1日
講義資料更新日
2015年12月16日
アクセス指標
学期
後期  /  推奨学期:4

講義概要

現代のエレクトロニクスは,その構成の基本要素となる半導体デバイスによって支えられている.半導体デバイスの動作を正しく
理解して改良したり,新しい電子機能を設計するなど高度な能力を習得するためには,まず,半導体物性について基礎的な理解を
得ることが第一に重要となる.本講義は,半導体工学の入門として,半導体物性の基礎概念について講述する.
電気系専門科目の初等科目として位置づけられた本講義では,電磁気学,量子力学等を基に構築された固体物理学を基礎として,
電気伝導やその他の物性に関する理解を「見える化」しながら丁寧に積み上げていく学修過程を採用する.

本講義では,講述に加え,適宜演習を行う.演習問題等を通して,半導体内部の複雑な現象を簡潔にモデル化し,基本方程式の
立式と求解を通して,考え方の論理的筋道を深く理解するとともに,そこから得られる具体的数値を視覚化して理解することで,
基礎学理に則った直感的な理解の仕方を学ぶ.

本講義では,下記のような内容について学ぶ.

まず,原子が周期的に結合した固体中ではエネルギーバンドが形成されること,また,その中に存在できる電子密度には
限りがあることから状態密度の概念について学び,そこに熱統計分布の考えを適用することでキャリア濃度を得る.
エネルギーバンド中における電子の運動の考察から,電子と正孔の概念について学び,不純物ドーピング,及びn型,p型
半導体の概念を得る.pn接合のポテンシャル分布を理解した後,固体中電気伝導を古典的に理解する際の基礎となる
ドリフト,拡散,再結合の各概念について学ぶ.つぎに,半導体中の電気伝導解析の基礎となる,キャリア連続の方程式に
ついて,応用例を通して学習し,半導体デバイスを理解するうえで不可欠なpn接合の電流電圧特性に関する基礎的理解を
得る.

本講義で学ぶ重要な概念:
固体のバンド構造,井戸型ポテンシャル,周期構造中の電子,有効質量,キャリアの状態密度,分布則,真性キャリア濃度,
ドーピング,移動度,ドリフト電流,拡散電流,再結合,バンド図,少数キャリア連続の方程式,pn接合,金属半導体接合

講義の目的

半導体工学の入門として,固体内電子のエネルギーや密度,分布則などについて基礎的な考え方を学んだ後,固体中の電気伝導理論について学習する.さらに,半導体中の電気伝導現象の基礎である,キャリア連続の方程式について応用を通して学習することにより,半導体デバイスの基本要素であるpn接合の物理と電気特性の基礎的理解を得る。

講義計画

01. 固体の結晶構造
02. エネルギーバンドの形成:定性論,水素原子,分子から固体,金属・半導体・絶縁体
03. 固体のバンド構造Ⅰ:量子力学の基礎,パウリの排他律,無限のポテンシャルに閉じ込められた電子
04. 固体のバンド構造Ⅱ:周期構造中の電子,許容帯,禁制帯,有効質量,電子と正孔
05. 統計力学の基礎:キャリアの状態密度,分布則,フェルミ準位,真性キャリア濃度
06. ドーピング:不純物ドーピング,電子濃度・正孔濃度,温度特性
07. 電気伝導の基礎Ⅰ:ドリフト  ドリフト速度,移動度,導電率,抵抗率,ホール効果
08. 電気伝導の基礎Ⅱ:拡散と再結合   拡散電流,拡散係数,再結合寿命時間
09. 少数キャリア連続の方程式
10. 少数キャリア連続の方程式の応用: キャリアの生成と再結合,拡散と再結合,拡散長,ドリフトと拡散
11. pn接合: pn接合の形成とバンド構造,接合容量,電界印加時の接合容量
12. pn接合の電流電圧特性: 少数キャリア連続の方程式からの理解
13. pn接合の電流電圧特性: 整流特性,電子電流と正孔電流,温度特性
14. 金属半導体接合
15. 半導体の応用

教科書・参考書等

教科書:高橋清、山田陽一 『半導体工学』第三版 森北出版
参考書:小長井誠『半導体物性』培風館

関連科目・履修の条件等

履修の条件:電磁気学Ⅰを履修していることが望ましい。
関連科目:化学第一,化学第二,物理学B,量子力学

成績評価

授業中の演習と中間・期末試験による.
配点は,演習20点,中間試験40点,期末試験40点.

担当教員の一言

固体の物性と電気伝導の原理を根本から理解し,半導体デバイス工学の基礎的事項に習熟することを目指します.演習を適宜取り入れ,学生諸君が実際に問題を解くことで主体的に理解を深める学習をサポートします.

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