基礎生命工学   Fundamentals of Bioengineering

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担当教員
大場 雅行 
使用教室
火3-4(S514)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
6219
シラバス更新日
2014年9月18日
講義資料更新日
2014年9月18日
学期
後期  /  推奨学期:6

講義概要

生体高分子の構造から機能を理解する道のりを,(1)DNAの構造(2)蛋白質の構造(3)酵素触媒の構造 (4) エネルギー代謝と細胞膜構造、の原理の研究の歴史を中心に学ぶ。加えて、これらに係わる分子の機能の柔軟性を構造のゆらぎの視点を入れて検討する試みをする。これらを通じて、生命工学の手法を生体高分子の設計にどのように生かしたらよいかについて理解を深める。

講義の目的

生命科学の進歩とともに生命維持の仕組みの原理が明らかになり、その仕組みを制御できる可能性が出てきた。基礎生命工学では、これらの背景にある生物の原理を学び、何を制御したらよいかについて理解を深める。
そのために,上記(1)~(4)でみられる原理について、原理自身だけでなくそれらを導出する背景となった考え方も含めて学ぶ。さらに、一分子レベルでの制御の際に重要となる分子のゆらぎという新たな視点から、これらの原理で見られる特異性と柔軟性の制御の可能性について考えを進めてみる。

講義計画

1.生命現象の原理探求の道のりを振り返って
・情報分子としてのDNAと遺伝子コドンの謎(化学物質の情報に論理思考で挑む)
・DNA構造の解明への道のり(生体分子と量子化学の接点)
・蛋白質結晶の規則性の探求と生体高分子の構造(X線結晶解析の解釈の柔軟性)
・電子伝達系とATP合成の共役の謎(エネルギーの熱力学とエネルギー共役)
・DNA合成酵素の探求と酵素触媒活性の正確度 (生体反応の触媒活性の構造化)
2.ゆらぐ世界での特異性と柔軟性とは
・酵素反応のミカエリス・メンテン式 (触媒上の平衡反応とゆらぎ)
・DNA塩基対の揺らぎとDNA複製の忠実度 (物質構造と保持される情報のゆらぎ)
・ATP分子、高エネルギー分子の構造のゆらぎとエネルギー (物質構造のゆらぎとエネルギー)
・ミオシンの首振り運動による力の発生(構造変化のゆらぎと分子間の協奏性)
3.これからの生体高分子構造
・配位子 エネルギー順位の柔軟性をどのように付与したらよいだろうか
・光合成 生体高分子で作る電子電極と本多・藤嶋効果に共通するものはなんだろうか
・表面加工効果 基質にとって触媒表面はどのように見えるのだろうか

教科書・参考書等

推薦参考書:“Molecular Biology of the Gene” J. D. Watoson et al. (The Benjamin/Cummings Publishing Company Inc.)、“Molecular Biology of the Cell” B. Alberts et al. (Garland Publishing Inc.)、“Principles of Biochemistry” A. Lehninger (Prentice-Hall Inc.)、コーンスタンプ生化学(化学同人)、日経サイエンス誌

関連科目・履修の条件等

生物化学工学の問題に関して考えてみたいと思っていること。

成績評価

出席、レポート、試験(いくつかの問題に関して、自分の視点を書いてもらう予定)

担当教員の一言

一つの生命現象をとってみても多数の生体分子が関与しており、複数の側面を持っている。その理解には、知識を増やす以上に自分の問題意識・視点を持つことが大切と思われる。それは近年話題になっている生命科学の倫理的な面に関して自分で判断しようとする場合にも役立つのではないかと思う。また、講義で扱う題材には、未解決の部分を多く含むものも含まれている。それが逆に、自分の観点から自由に問題を捕らえるきっかけになることを期待している。

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