科学技術が安全に利用される上で重要となる「技術者倫理」について、その基礎と事例を系統立てて講義し、化学技術者の素養としての倫理を身につける。
技術者を取り巻く環境は大きく変化している。技術者は単なる技術進歩の推進者であるのみならず、その行動や成果が環境、人類、社会に及ぼす影響についても強い責任を持つ自律的な行動者である。
しかしながら、最近では、ボーイング787のバッテリー故障、中央自動車道笹子トンネルの事故、福島第一原子力発電所事故など技術の信頼を失わせるような事例が多く発生している。技術者は、科学技術がもたらす危害の抑止をも職務とするものであり、そのための法的責任と専門職としての責任(モラル責任)を負っている。技術者が、地域から地球規模に及ぶ環境問題に関与するとき、そのモラル責任のあり方は重要である。
このような技術の信頼性を回復するために、技術者が変革に立ち向かう考え方の基礎的な事項について説明し、事故事例を通じて技術者倫理のあり方について考えるとともに、技術者の役割や実際の業務にあたっての適用などについて討論する。
講義の中で4回実施するグループ討論では、意見の異なる人との対話の仕方やまとめ方について学ぶとともに、グループや個人の討論結果を発表し、また互いに意見を交わすことによって、技術者倫理に関する理解を深める。
1. 技術者倫理の成り立ち
2. 技術者と倫理
3. モラル上の人間関係
4. 製造物責任
5. 意思決定の方法
6. グループ討論(1)
7. 正直性・真実性・信頼性
8. 説明責任
9. 警笛鳴らし
10. グループ討論(2)
11. グループ討論(3)
12. 環境と技術者
13. 技術者の財産的権利
14. グループ討論(4)
15. 技術者の資格と国際活動
※注:項目1,2,4,6,8,12,13,14,15は橋本講師,項目3,5,7,9,は飯田講師、項目10,11は両講師が担当する。
各項目ごとに要約を作成し配布する。また、OHPを併用する。
参考書:杉本泰治・高城重厚「技術者の倫理入門」(丸善)
日本技術士会訳編「科学技術者の倫理」(丸善)
特になし。
講義中に作成する3回の小論文、およびグループ討論の発表内容によって評価する。
現代の技術は人間の生活すべての局面に深くかかわる複合システムとして、産業の振興、経済の成長そして生活の質の向上という役割を担い、人間社会の福利に貢献している。したがって技術者は、その専門とする業務の実行に際しては、公衆の安全・健康そして福利に関して、常にこれを意識し、誠実に行動することが求められる。法的責任や職務上の責任など技術と社会や組織との関連を通じて技術者の倫理について学習する。