基礎生命工学   Fundamentals of Bioengineering

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担当教員
大場 雅行 
使用教室
火3-4(H136)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
6219
シラバス更新日
2010年9月20日
講義資料更新日
2010年9月20日
学期
後期  /  推奨学期:6

講義概要

生体高分子の構造から機能をどれだけ説明できるかについて,総説をとりあげて解説する。具体的には,(1)DNA (2)酵素触媒 (3)細胞膜構造 (4)遺伝子の安定性 (5)光合成系 (6)遺伝子診断に関するものを予定している。あえて高次の生命現象も含めてあるが,それが物質のレベルでどの程度説明可能かを試みる。高分子の化学的性質,物理的構造がそれらの現象にどのように反映されているかを探ることから,逆に,機能をもつ構造とは何かを考えるヒントが得られることを期待する。

講義の目的

分子生物学の発展とともに生体構成成分の構造に関する知識は飛躍的に増えた。しかしこれら静的な知識と生体物質の機能の理解という動的な知識の間には大きなギャップがある。この講義は生体成分の構造の側からそのギャップにどこまで迫れるかという試みについていくつかの例を引いて紹介する。

講義計画

1. DNAの安定性と遺伝子機能 (DNA二重鎖の融解、PCR)
2. 高分子合成の正確さ (負のエントロピー、DNA・蛋白合成)
3. 酵素-アミノ酸で作られる高性能触媒 (抗体酵素、リボザイム、人工酵素)
4. 脂質重合体としての膜の柔軟さ (フルイドモザイクモデル、イオンチャンネル)
5. 光合成におけるエネルギー変換 (膜電位、イオン勾配、酸化還元エネルギー)
6. エネルギー変換系としての筋肉 (ATP分解、カルシウムイオン)
7. エネルギー変換装置としてのミトコンドリア (ATP合成、TCA回路)
8. 情報の変換 (ロドプシン、cGMP、cAMP、燐酸化、癌遺伝子)
9. 遺伝子工学、細胞工学、組織工学 (遺伝子治療、細胞融合、人工臓器)

教科書・参考書等

推薦参考書:“Molecular Biology of the Gene” J. D. Watoson et al. (The Benjamin/Cummings Publishing Company Inc.)、“Molecular Biology of the Cell” B. Alberts et al. (Garland Publishing Inc.)、“Plinciple of Biochemistry” A. Lehninger (Prentice-Hall Inc.)、コーンスタンプ生化学(化学同人)、薬科分子生物学(講談社サイエンティフィク)、日経サイエンス誌

関連科目・履修の条件等

生物化学工学の問題に関して考えてみたいと思っていること。

成績評価

いくつかの問題に関して、自分の視点を書いてもらう予定。

担当教員の一言

一つの生命現象をとってみても多数の生体分子が関与しており、複数の側面を持っている。その理解には知識を増やす以上に自分の問題意識,視点を持つことが大切と思われる。それは近年話題になっている生命科学の倫理的な面に関して自分で判断しようとする場合にも役立つのではないかと思う。また、講義で扱う題材には、未解決の部分を多く含むものも含まれている。それが逆に、自分の観点から自由に問題を捕らえるきっかけになることを期待している。

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