現代物性物理   Modern Condensed Matter Physics

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担当教員
西田 信彦 
使用教室
木3-4(H112)  
単位数
講義:2  演習:0  実験:0
講義コード
5218
シラバス更新日
2011年10月13日
講義資料更新日
2011年9月20日
学期
後期  /  推奨学期:6,8

講義概要

講義で習った量子力学や熱統計力学をより身近なものとして理解できるように、量子力学が目で見える形であらわれている
種々の物性実験をとりあげ、今までにもっている知識で理解できるうように工夫して話す。
超流動、超伝導の物質波状態、レーザー冷却アルカリ原子ボース凝縮、
金属固体中電子輸送現象におけるAB効果、量子電気抵抗、量子ホール効果等、
また電子顕微鏡や走査トンネル顕微鏡等の電子波、トンネル効果の量子力学が直接測定原理となっている
最先端の物性物理実験についても解説する。

講義の目的

原子、分子がアボガドロ数個集まった凝縮体の物理、物性物理の入門となる講義である。物質のマクロな性質はそれを構成する多数の原子、分子、電子の
ミクロな運動状態によって決まる。現在、物性物理実験の研究手法は非常に進歩し、実験室において温度、磁場、圧力等はときに自然界にない極端条件も作れ、
また、物質中の1原子を直接観測することや、電子状態を原子長空間分解能で測定することが可能になっている。先端の物性測定技術実験で、
講義で習った量子力学や統計力学における、トンネル効果、零点運動、フェルム縮退、ボーズ-アインシュタイン凝縮等が、現実の現象としていかに現れ、
また観測されるかについて話す。特に、超伝導、超流動現象、電気抵抗の量子化等を紹介する。

講義計画

第1回  10月6日
1. 現代物性物理の始まり
(1) 気体液化の歴史
・技術開発と科学-ヘリウム液化と超流動・超伝導の発見
(2) ヘリウム液化の現代的意義
・不凍液体 → 量子液体 (量子性パラメーター)
・相互作用と量子効果-液体と固体、金属と絶縁体
第2回  10月13日
2. 超伝導・超流動―目で見える量子力学
2.1 超流動(Superfluidity)
 (1)不凍液体ヘリウムと熱力学第3法則 ヘリウムの相図
 (2)超流動ヘリウムの不思議な性質
第3回 10月20日
2.1の続き
(3) Bose-Einstein凝縮
(4) 中性アルカリ原子のBose-Einstein凝縮
第4回 11月10日
(4) 超流動ヘリウム:超流体(ボーズ凝縮体)の運動
(6) なぜ超流動となる?-超流動と素励起 ランダウの考え
第5回 11月17日
2.2 超伝導(Superconductivity)
(1)超伝導の発見
(2)自由電子模型-金属中の電子(1粒子運動)
第6回  11月24日
(3)超伝導の性質
   (a)完全導体(R=0)(b)マイスナー効果(B=0)(c)臨界磁場
   (d)磁化、凝縮エネルギー、第1種、第2種超伝導体
第7回  12月1日
  2.2の続き
   (e)磁束の量子化  (f)第2種超伝導体の混合状態(渦糸状態)
(4)ロンドンの理論-巨視的波動関数
 (a)超伝導電流 (b)マイスナー効果 (c)磁束の量子化とクーパー対
第8回  12月8日
(5)ジョゼフソン効果
 (a)ジョゼフソンの基礎方程式   
 (b)DCジョゼフソン効果
 (c)ACジョゼフソン効果
第9回  12月15日
 (d)磁場の影響
 (e)ジョゼフソン効果の応用:SQUID  
 (f)巨視的量子トンネル効果
第10回 12月22日
(6)超伝導渦糸とその運動の観測-STM/STS
第11回 1月5日
3. 量子輸送現象
(1) AB効果の実証実験(電子顕微鏡)
(2) 金属中電子のAB効果
第12回 1月12日
4、の続き
(3)電気抵抗の量子化
 (a)2次元電子系(半導体ヘテロ接合)
 (b)量子ホール効果
第13回  1月19日 続き 
(4)グラフェン
第14回 1月26日
4. 現代物性物理の一側面: 実験技術のめざましい発展
(1) 極限環境技術(極低温、超高圧、超強磁場)、超高感度測定技術 
(2) ナノサイエンス: サブナノメーター観測、ナノ構造物
第15回 2月2日
(3) 量子ビームの利用-電子、光(X線、レーザー、放射光)中性子、ミュオン

教科書・参考書等

講義用プリントを用意する予定。

関連科目・履修の条件等

量子力学、統計物理学の基礎的な知識を必要とする。量子力学第一、熱・統計物理学第一、第二を履修していることが好ましい。基礎固体物理学第を受講することを勧める。

成績評価

授業出席と試験により行う。

担当教員の一言

現代物性物理学の面白さを知ってもらう。

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