ケーラー幾何の問題の一つに,アインシュタイン計量やスカラー曲率一定計量などの標準ケーラー計量の存在問題(未解決)があり,今なお研究が進んでいます.
この講義では,ファノ多様体上のケーラー・アインシュタイン計量を中心に標準ケーラー計量の存在問題の最近の動向について紹介することを目的とします.
・乗数イデアル層,Tian の alpha 不変量に関する話題
・Yau-Tian-Donaldson 予想に関する話題 を中心に講義を進める予定です.
1.Akito Futaki, Kahler-Einstein metrics and integral invariants, Lecture Notes in Math., vol.1314 (Springer-Verlag)
2.中島啓,非線形問題と複素幾何学,岩波書店
3.D.H. Phong and Jacob Sturm, Lectures on stability and constant scalar curvature, Current Developments in Mathematics Volume 2007 (2009), 101-176. (または arXiv:0801.4179)
多様体(リーマン計量,曲率など)に関する知識を仮定します.
必要となる結果・定理についてはなるべく講義中で述べ,参考文献を紹介する予定です.
出席とレポート提出による.
ケーラー・アインシュタイン計量の問題について,現在も多くの論文が発表されています.
それらを網羅することは難しいですが,出来るだけ多くの結果を紹介できるようにしたいと思います.