変分法についての入門的講義とそのパターン形成問題への応用例をいくつか解説したい.
主に関数解析的な手法や変分法を用いて、いくつかの単独の反応拡散方程式に対する定常パターン形成の問題についての解析(付随する非線形楕円型境界値問題の解析)を紹介する。
変分法の基本的手法の修得と共に、関数解析的手法の活用のあり方を学ぶ1つの応用として、いくつかの単独な反応拡散方程式における定常解の存在や形状についての数学解析の現状を学ぶ。反応拡散方程式としては、単独ではあるが典型的な双安定型の非線形効果をもつモデルを主な対象とし、領域や環境効果と安定多重パターンの存在や漸近的形状(拡散係数をゼロに近づけた場合の特異極限問題)などについての解析について学ぶ。
通常のカリキュラムで学ぶであろう、ポアソン方程式を代表とする線形楕円型偏微分方程式およびルベーグ積分論、関数解析や関数空間(ソボレフ空間)の基礎的事項の比較的簡単な運用例を学ぶことによって、こうした分野や関連分野への興味が広がることを期待したい。
1. ソボレフ空間や2階の線形楕円型偏微分方程式の基礎事項
2. 変分法の基本的手法について
3. エネルギー最小解の比較、解の漸近挙動の解析
4. Allen-Cahn方程式におけるパターン形成問題(領域とパターン形成)
5. Allen-Cahn方程式におけるパターン形成問題(環境とパターン形成)
6. 数理生態学の個体増殖モデルにおけるパターン形成問題
参考書として、
関数解析の基礎事項については、
[1]「関数解析」(増田 久弥著、裳華房)、
ソボレフ空間や楕円型偏微分方程式の基礎事項については、
[2]「Partial Differential Equations」(L.C.Evans著、アメリカ数学会)、
または、
[3]「楕円型・放物型偏微分方程式」(村田 實、倉田 和浩著、岩波書店)
を挙げておく。
ルベーグ積分、関数解析の基礎については学んでいることが望ましい。
出席とレポートによる。
ただし、必要な関数解析の基礎事項については最初の授業で適宜説明を行う予定である。
また、ソボレフ空間(弱微分の定義も含め)や線形楕円型偏微分方程式に関する基礎事項についても説明を行う。しかしながら、時間の都合上、証明せずに活用せざるを得ない定理もいくつか出てくると思われるが、運用および活用を味わうことに主眼を置くことで、逆にそうした基本的事項をしっかり学ぶことへの動機付けとしてほしい。