社会的価値意識は膨大な言説複合体として形成されている。我々の日々の言説実践は,こうした社会的言説への批判を内蔵していなければならない。講義では近代の文芸批評を事例として,文芸批評とはいかなる言説行為であるか,文芸批評はいかに社会的言説と切り結んだか,を考える。扱うのは,小林秀雄と中野重治の対比を中心に,昭和の戦時下の言説。
今年度は内容を一新して、小説の読解を行う。取り上げるのは芥川龍之介、筒井康隆、大江健三郎。
小説はいかに語るか。小説の語りは読者をだます騙りでもある。近現代の代表的な小説(短篇中心)を実際に読み解いてみる。
・芥川龍之介「邪宗門」「袈裟と盛遠」「芋粥」「好色」
・筒井康隆『夢の木坂分岐点』
・大江健三郎「頭のいい「雨の木」」「「雨の木」を聴く女たち」「「雨の木」の首吊り男」「さかさまに立つ「雨の木」」「泳ぐ男―水の中の「雨の木」」
・芥川龍之介『羅生門・鼻』(新潮文庫)
・筒井康隆『夢の木坂分岐点』(新潮文庫)
・大江健三郎『「雨の木」を聴く女たち』(新潮文庫)
出席と発表およびレポート
テキストは必ず指定の文庫で事前に入手し、できるだけ読んでおくこと。